12年ほど前に大きな手術を受けたのですが、その2週間ほど前に禁煙したんですよ。それまでに1回あたり18時間くらいの禁煙には100回くらい成功していたベテラン禁煙者だったんですが、24時間以上は経験がなかったんです。

 

だけどある日、「術後に痰が絡んだとき、それを出すことは術後の痛みから大変困難です。うまく出せない場合は呼吸できずに最悪死にます。今からタバコを止めておかないと痰が絡んで死ぬ可能性が高まりますよ」って主治医に言われたんです。

 

「手術には成功したものの、医師の指示を聞かずに喫煙を続けた結果、痰がからんで死んだ」というバカバカしい結末を迎える可能性が急に具体的になり、手術の2週間前に喫煙のメリットより禁煙のメリットの方があることをはっきり自覚しました。

 

こうして禁煙が始まりましたが、ガキの頃から手を出した末、20代からはずっとコンスタントに12025本を吸ってきたバリバリのニコチン中毒者の僕ですから離脱症状もひどかったですね。視界に靄(もや)がかかるんですよ。しきりにあくびが出てとにかく眠い。そしてタバコのことしか考えられない。

 

でも、そんな状態が10日くらい続いたあと結構平気になってきて、そのまま手術になだれ込んで1週間入院して出てきたら、もうニコチンの奴隷ではなくなっていました。

 

そうです。禁煙の方法はいくらでもありますけど、本当に禁煙しようと思えば器具や薬に頼らなくても辞められますよ。「本当に禁煙しようとしている」のに吸ってしまうのは、それは結局「本気じゃない」ってことですが、逆に「真に本気になる」ということは、喫煙のデメリットが自分事として強く認識できたとうことなんですよね。

 

元バリバリの常習喫煙者ですからニコチンの魔力は知っています。簡単に止められた少数のエリートたちを禍々しく思うほどでした。僕などは「この最後の1本を吸ったら終わりだ。キリがいいし」とか言ってその「最後の1本」を吸うものの、すぐに我慢できなくて「これが最後の一箱だ」ってまた買ってしまうんです。

 

「あと1本で止める!」っていう誓いがいとも簡単に「20本吸ってから止める」いう誓いに後退しています。そして19本吸った時点でまた「この一本で最後だ」のシーンに戻るわけですが、この物語は結局延々と繰り返され、終わりを迎えられないわけです。

 

場合によっては、あるタイミングから「別に違法じゃねーし」とか「別に自分の稼ぎで買って吸ってるんだし」とか「俺が健康を害したからって誰にも迷惑かけてねーし」とか、まあタバコを吸ってしまう自分を正当化する100万の言い訳で自分の意志の弱さを糊塗します。別に誰からも責められていないのに誰に何を言い訳してるのやらw。

 

まあ、言い訳の中でも論理的に完璧なものは「タバコを吸っていたからって癌(などの疾患)になるとは限らないし、非喫煙者でも癌になることはある」ってやつですね。実際その通りですから。でも、だったら言い訳しないで吸えばいいだけなんですよね。禁煙しようとして失敗した人がこれを言うのはちょっとみっともないかもしれません。

 

まあ、離脱症状の不快さから逃げること(つまりタバコを吸ってしまうわけですが)の難しさは想像を絶するってことなんですよ。たとえば「慢性閉塞性肺疾患のために鼻に管を入れて酸素を補いながらトボトボ歩いている自分を想像してみてください」などと言われたところで、殆どの喫煙者はタバコを止められません。そうなってから初めて「止めておけばよかった」と悔いるんです。離脱症状ってそれほど凄いんですよ。

慢性疾患

 Yahoo Newsからとった画像です

離脱症状に負けてタバコを吸うことで失うもの。それがシャレにならないほど大きいことを心から自覚して本気になった人だけが禁煙できます。あなたが愛する全ての人、モノ、趣味などをあえて早期に失うような行為が喫煙です。心からそう思い、愛する者との別れなどを想像して震え上がれたなら、その時あなたの禁煙はきっと成功するはずです。