「アメリカの物価は安いものは極端に安い」という話を前回書いた。おさらいすると、モノやサービスが極端に安くなるのは「大量生産できている商品をそのままシンプルに、何の付加価値もなしに売る場合」だ。

しかし、逆に大量生産品でも一個売りの場合や人の手間がかかっているモノ、そして「アメリカの国柄を反映したサービス」は途端に高くなることが多いのだ。そこで今日は「何でこんなに高いの!」というものの紹介だ。

 
◆車の保険 

まず「アメリカという国の国柄」が理由で極端な高値になっているのだろうと思われるサービスで、しかも生活上必須のものの代表例は車の保険だ。東京では車を持っていなかったから詳細は知らないが、日本の保険のCMを見ていると2万とか3万とかくらいから保険に入れたはずだ。

だが、僕と妻は
1300ドル(156000円)払っている。勿論保証内容を最小限にすれば少しは安くなるのだろうが、それでも二人で500ドルなどという商品はない。恐らく訴訟社会のアメリカで事故ればとてつもない賠償金を請求されかねないため、それを見込んだ保険料設定になっているのだと思う。「アメリカの国柄」と言った理由はこれだ。僕らの保険もフルカバーだ。下の写真みたいな目にあったし。

IMG_1289
2013年10月、左折中に信号無視のおばあさんに追突され、バンパーが死ぬ

 
◆医療費 

そしてもう一つの代表例が医療費だ。アメリカの健康保険制度というのは日本の国民皆保険とは全く違い、「民間の保険会社の保険商品にユーザーが好きに選んで入っていい」というものだ。日本でサラリーマンをやっていれば給与額と保険料は比例するが、アメリカではそんな仕組みはない。会社は私企業である保険会社と法人契約し、従業員は会社のルールにのっとり保険料を負担する。


個人事業主は日本では国民健康保険に入り、その保険額は所得に連動するはずだ。だがアメリカは保険会社を自由に選んでいいし掛け金も懐事情による。だから、貧乏なら貧乏なりの掛け金で、お金持ちはお金持ちなりの掛け金で商品を選べる。結果、一般人と金持ちのカバー内容は全然違うものになる(なお本当の貧困層には政府が保険を用意している)。

 

たとえば「保険会社が負担を始めるのは医療費が300ドルを超えたところから」、という契約になれば(普通の庶民は大体そんな契約になる)、もし医療費が298ドルだった場合自己負担は100%だ。日本なら500円でも5万円でも3割負担なのに。

 

しかも、もしあなたが何らかの事情で無保険だったら、そしてもし「たかが盲腸」でも患ってしまったら、恐らくあなたは真っ青になるだろう。何しろ手術にかかる費用は最低でも20000ドル(240万円)だ。標準的な内容の保険に入っていれば年間の負担総額は5000ドル程度の契約になっているはずだから差し引き15000ドルは保険会社持ちだが、無保険なら全額負担だ。しかもしかも、あなたが無保険とわかったら手術を拒否される可能性だって低くない。アメリカは怖い。

 
◆住居賃貸料

ほかに生活に密着したもので特記すべきは家賃だ。僕の家(コンドミニアム)は60平米で日本風に言えば1LDKだが、これをもし借りるとなると相場では1350ドル(今のドル円レートでは162000円)払う必要がある。駅から10分のところにある僕の赤羽の3LDKのマンション(恥ずかしい呼称だ)を貸してもそんなに高い家賃は取れないのではないだろうか。

IMG_0231
我が家のリビング

南カリフォルニアの(一応)都会にあるとはいえ、まだまだ手つかずの土地も豊富にある環境だ。なのに、曲がりなりにも東京23区内のターミナル駅から10分の場所にある3LDKのマンションの賃貸価格が、そんな場所と比べ同じか安いっていうのは普通ではないと僕は思う。アメリカではサラリーマンや学生さんの中にはルームシェアで何とか負担を抑えたがる人も多いが、それは当然のことだと言える。

 
◆単品売り 

あと身近なところでは、モノの「一個売り・一本売り」には気を付けた方がいいだろう。たとえば冷蔵庫で冷やされたコーラ(550cc入りペットボトル)は一本200円かかる。これはスーパーでもコンビニでも一緒だ。350㏄入りの缶コーラなら数ケース単位での購入なら1本あたり25円で買えるのに200円払ってどうするの、って話だ。ガムも一個単位なら120円だ。3個セットなら200~240円程度なのに。

 
◆安いものの追加情報 

生活密着品やサービスで高いモノの例で思いつくのは以上のような感じだが、結局のところアメリカの物価の話になれば「安い事例」のほうが多い。生鮮食品は普通なんでも圧倒的に安いし。(ただ意外と卵が高い。普通サイズで普通品質の場合、今は1ダースで260円くらいだ。ご注意願いたい)。なので最後にまた安いものの例を数点あげて今日は終わりにしたい。

 

<肉類>

鳥肉は1パウンド(453g)で1.5ドル(180円)で買え、しかも非常に臭味がなく旨い(豚も安くてまあまあ旨い。牛だけが安いがまずい)。

 

<光熱費>

僕と妻でアメリカに来てから、ガスは月平均9ドル、電気は月平均13ドル程度にしかなっていない。東京で暮らしていたころのガスや電気の価格は詳細には覚えていないのだが、毎月光熱費は両方で最低でも月平均1万円は行っていたはずで、2500円で済んでいたという記憶はない。

ただ、単位あたりの価格が安いのは確かなのだが、それ以上に重要なのはここの気候である。何しろエアコンを使わなくていい。夏は暑いけど湿気がないから暑がりでない限りエアコンはいらない。冬は温暖でストーブとかがいるのはせいぜい10日前後だ。この気候が電気ガス代の最小化につながっている。なお、上下水道については、僕の住んでいるコミュニティーが固定の管理費の中に組み込んでいるのでいくらなのかわからない。

 

<ガソリン>

ずっと昨年夏くらいまでは1ガロン(3.78リットル)あたり3.5ドルだったが、今は2.3ドルになっている。リッター換算で0.6ドル、72円だ。なお、カリフォルニアはガソリンは高い方なので、安い州なら更に安い。この記事を書いている現在一番安いのはオクラホマ州で「ガロン平均1.84ドル」だ。これをわかりやすく円とリッターで言うと「リッター58円」となる。

 

こんな感じだ。