アメリカ西海岸、しかもロサンゼルス以南100km程度の知識だが、アメリカの賃貸物件は思った以上に高い。僕の事務所兼自宅は1990年築の60平米だが、借りると13万から14万する。だから学生などは複数人でシェアするパターンが多いのだろう。

確かに西海岸はアメリカでは人口密集地だが、それでもまだまだ土地はある。なのにこの金額は東京並みではないか。なので日本の財産を処分できるとか、アメリカで一定以上の高い給与がもらえる見込みのある人などは家の購入も考えるべきだと思う。

さて、アメリカで家を借りる方法は多くの先達がいるので検索すれば山ほど出てくるが(たとえばこのブログ)、家を買う方法は、そしてその実態はなかなかわからないのではないかと思う。僕は2012年に家をアメリカで購入した経験者で、しかもまだ移住前の色々な制約の中で購入をしているので、もしかすると皆さんの役に立つかもしれないと思いこの購入経験を以下にしたためたい。

まず僕は、グリーンカードの面接が終わった2012年初頭、家をローンで買えるか調べまくっていた。現金
で買わずローンを組みたかった理由は、現金で買うより少し高い(即ち良い)物件を買える一方、一気に吐き出す資金は現金購入より少なく出来るので、渡米後未収入期間が長引いてもより我慢できるからだった。

ただ、予想していたことだが検索の結果は基本「無理」だった。アメリカ発行のクレジットカードを持たず、アメリカでローンを組んで支払ってきた履歴もない新参者の日本人にはローンは無理なのだ。しかし、David LEEさんという現地エージェントが「キャセイ銀行なら大丈夫な可能性がある」と言うので、僕はLeeさんに僕らの代理人になってもらい(費用はゼロ、説明は後ほど)、彼のアドバイスの下でキャセイの要求する資料を揃え、ローンを申し込んだ。

それ以後はこんな流れになる。

 1)4月下旬に妻と現地(加州オレンジ郡)に行き、そこでキャセイ銀行の人にも会い、
   仮のローン許可証(「プリ・アプルーバル」という)を得た。これは家の売り手に
   「この買い手はローンを組める能力があります」と証明する大事なモノだ。
   これがなくて売り手に相手にしてもらうには「現金で買えます」と言う必要が
   ある。

 2)現地に2週間滞在して家を探し、気に入ったものにLeeさん経由でオファーをした
 
   ※なお、家の売価は当初から設定されているが、日本と違って全ての家は「競り」
    なので、売主は当初出していた値段で売る必要はない。一方買主は、絶対欲しい
    物件なら売主の提示価格に上乗せした額をオファーしてもいい。
   
 3)現金爆弾の中国人に負け続けた後、物件XがとうとうOKとなる。相手が設定する
   期限内にキャセイ銀行からローンの最終許可をもらう必要があったが、
   キャセイが許可を出すか出さないかの判断に迷い、色々な追加資料を僕らに
   出させた揚げ句、期限ぎりぎりでローンの不許可を言ってきた。これにてXを
   買うことはできなくなった。

   ※キャセイも結局アメリカでのクレジットヒストリーなどが必要だったのだが、
    担当者が独自判断で動いたのだった。ところが審査部門を通過できず僕らの
    苦労も水の泡になったという次第。

   ※この時の中国人の攻勢は凄まじかった。現金で不動産を「買いあさる」という
    表現がぴったりだった。どの物件に行っても彼等がいて、その場でさっさと
    申込書類を作っていたがその作成スピードが速いのなんの。頭金やローンの
    額を計算しなくていから、金額記入欄の記載が楽なのだ。

 4)5月日本に帰国。方針を変更し自分たちの蓄えだけで買える安価な物件を買うことに
   する。殆どがShort Sale(ショートセール)物件。LEEさんにいい物件を見つけて
   もらい、こちらもウェブでいい物件を探し、気に入ったものはLeeさんに状況を
   見てもらい、よければオファーを入れるという方針で行く。

   ※ショートセールとは売主が支払いを完済できずに手放すことになった物件。
    銀行は当然ローンを全額支払ってほしいが、売主がリストラなどで支払い能力を
    無くした場合、物理的に残債を返してもらえなくなる。
    そこで売主に「売る作業」をさせ、売れた金額を全部銀行に入れることで
    チャラにする、そんな仕組みがショートセール。銀行は、売主に販売をさせて
    経費を絞る一方、販売価格については売主の独断を認めない権限も有している。
    売ればチャラなので、極端な話何の制約もないなら売主は売値500円でも喜んで
    売るからだ。

 5)6月、いい物件をネットで発見。Leeさんに見てもらい、やはりお買い得と判断して
   もらう。お金に余裕がないのでオファーを先方の提示額どおりで入れる。現金は
   強いが提示額通りは弱い。これでは競合に勝てない可能性も十分ある。

   ※不動産情報サイトは色々あるが、Leeさんに教えてもらったのが上記のサイトだ。
    プロが一番見ていて更新が速いということだった。

 6)8月上旬、先方が「売る」と言ってくる。但し8月中にエスクローの手続きを
   済ませろ、とのこと。
原状渡しということで納得し、契約書の署名してスキャンして
   送り、8月下旬に
慌てて現地に行き、売主と会い、物件の説明を受け、エスクローの
   手続きを行う。鍵を渡してもらう前日に妻が会社に関係で帰日せねばならず、
   鍵はLeeさんに預かってもらう。

   ※エスクローとは要は登記のこと。

 7)10月10日、この家に住み始める。

こうして僕らの住居購入計画は成功裏(?)に終わった。骨を折って頂いたLeeさんだが、僕らは1銭も払っていない。何故ならば、彼らエージェントの報酬は売主から出るから。