この日はペイジからフェニックスまでは、ほぼ南に一直線という感じで進んだ。

 az-6
行程のほぼ真ん中にはFlagstaff(フラッグスタッフ)という町があるが、ここはまさに「ロッキー最南端」にある町だ。ここを過ぎて南に行くことは、即ちロッキー越えをすることだ。一体何回ロッキーの上り下りをしているのか。Flagstaffを過ぎると最近とみに有名になってきたSedona(セドナ)を通る。Voltex(ボルテックス)と言われる「自然の気」みたいなものが湧きでる町として有名とのことだが、そんなことを知らなかった我々は”一気に”通過した。

フラッグスタッフがあるロッキー最南端を下りセドナを経て砂漠に入っていく道程は、緑とせせらぎがずっと道路に寄り添うように走っている。ここでラジオから流れたのがMarcy Playgroundの「Sex and Candy」だった。初めて聞いたこの曲は、あとで調べると1997年のリリースだという。タイトルもタイトルだし、歌われている歌詞は走っている場所と何もリンクしないのだが、メロウなメロディーとけだるい歌い方、しかしささくれだった粗めの演奏が何故か景色とペアで忘れられなくなる、そんなこともあるのだ。


山間部が終わるといよいよ砂漠だ。フェニックス一帯はソノラと呼ばれる砂漠で、日本人が知る典型的なサボテンがやたらに目に入る場所だ。フェニックスにいよいよ近づき、食事をとろうとショッピングモールで車から降りてのけぞった。暑い。120°F近くある。つまり49°Cだ。僕は喜んでいたが妻が調子が悪くなってしまった。

CIMG0264
このアメリカの典型的露店型ショッピングモールで妻は軽い熱中症になった

フェニックスはどうにも困った街だった。予備知識なく行ったことは反省するが、大きい割に何もない。小さくないから的が絞れない、そんな印象を抱いた。モーテル選びもてこずり、決まったのは夜8:00過ぎだった。
妻ではないが「ここは性にあわない」と思えた。

az-7

翌朝LAに向けて出発。難しいことは何もなく、I-10で西へひたすら行けば、終点はLAとなる。道中、非常に気味の悪い場所を通った。Palm Springs(パームスプリングス)という町だ。風力発電のメッカとのことで発電用の白い風車が何万台と建てられ、羽が無表情に回っていた。無機質で感情のないロボットのようで印象はよくはなかったし、その中を通過していくのはシュールだった。

LAについてからは基本的にはショッピングを楽しむが、今回は絶対にやりたいことがあった。それは僕のビートルズオタクとしての欲望を叶えることだ。彼らの曲に「Blue Jay Way」というものがある。これはLAに実在する道路で、アンニュイでやや不気味なメロディーとアレンジで、以下のような歌詞が歌われている。

 LAは霧に覆われている / それで友人が道に迷ったしまった
 もうすぐ着くよと言っていたが / 道に迷ってしまうとは
 遅くならないでほしいな / 遅くならないでよ
 これ以上時間がかかるなら / もう僕は眠ってしまうよ

このBlue Jay Wayに、とうとう行った。オタク以外には何ら楽しさは感じないことだろうが、旅とは他人に理解されない個人の欲望を自分なりの方法で満たすことなり。

CIMG0289

LAでしたいことは更にあった。前年に映画「Mulholland Drive(マルホランドドライブ)」をビデオを借りて観て、舞台となったその道路を是非走ってみたかったのだ。ハリウッドの山の稜線を這うような道路で正直悪路といっていい道路だったが、走り屋には面白いのだろうと思えた。沿道の家々は高級で、普通の平民では住めない住宅地だとすぐにわかる。

ビバリーヒルズには過去にも何度か行っていて、イーグルスの「ホテルカリフォルニア」のジャケットになった「The Beverly Hills Hotel」も見に行ったが、デジカメで撮ったのはこの年が初めてだったので掲載しておく。

CIMG0300