第5日(5/1)
マナッサス(Manassas, VA)⇒ベイカー(Baker,
WV)⇒アッシュビル(Asheville, SC)
この日のテーマは「ジョン・デンバー」だった。ご存知の人も多いと思うが、彼が歌った「Take me home,country roads」は以下のような歌詞だ(すげー意訳入れてます)。
まるで天国のようなウェストバージニアよ
聳えるブルーリッジ山脈、たゆたうシェナンドー川
そこに宿る生命は茂る木々よりも古く、しかし彼の山々よりは若く
そよ風のごとく脈々と繋ながれ行く
田舎道が我を故郷へと誘う
ウェストバージニアが 母なる山々が
我を誘う 故郷へと
子供のころに聞いたこの歌、オリビア・ニュートン・ジョンがカバーしてヒットしたこの歌。そこに歌われた「West
Virginia」、就中「Ridge Mountains」と「Shenandoah River」に僕は行きたかった。
なお、このバージョンではジョンデンバーがこの曲を書いた共作者たちと歌っている。共作だったことも驚きだったが、実はジョンデンバーは後から曲作りに加わった(つまり大元は出来上がっていた)と知って二重に驚いた。 |
朝、まずはインターステート66号でマナッサスからウェストバージニア州ベイカー(Baker)という町に「無理に」入った。ここに「無理に」寄った理由は後で説明する。
さて、上の写真が示すようにドイツ人とスコティッシュアイリッシュが最初のウェストバージニアへの入植者だ。この「バージニア西部の場所」はフランス-インディアン戦争時に英国とフランスがここを境界に定めたとも書いてあるが、そう、当時ここはバージニア西部だったのであってウェストバージニアではなかった。ウェストバージニアは南北戦争を機にバージニアから分離して誕生した。
それでは無理にBakerに寄った理由だが、目当てのブルーリッジやシェナンドーなどの目的地に行くための合理的なルートを取ると、なんとウェストバージニアには一切入らないという衝撃的な事実がわかっていたからだ。それらは基本「ただのバージニア州」にあったのだ。以下がウィキペディアのシェナンドー川の説明だ。
バージニア州リバートンで、サウスフォーク川とノースフォーク川とが合流してシェナンドー川となり、アパラチア山脈のうちのブルーリッジ山脈の東側を北北東に流れる。合流点付近のわずかな区間のみウェストバージニア州の南東端に入り、バージニア州及びメリーランド州との州境近くのハーパーズ・フェリーでポトマック川に合流する。 |
シェナンドー国立公園も、町としてのシェナンドーもバージニア州に属し、川としてのシェナンドーは、その北の端っこがなんとかウェストバージニア州にかかっているだけ。なんでだ。
それだけではない。上に「ブルーリッジ山脈」が出てくる。もう一つのお目当ての場所だ。これも調べてもらうとわかるが、ウェストバージニア州にかかっていない。アパラチア山脈は確かにウェストバージニア州にかかっているが、アパラチアを構成するブルーリッジ山脈はかかっていないのだ。なんでだ。
ウェストバージニア州の歌じゃないじゃん、これじゃ。バージニア州の歌じゃん、基本。ジョン・デンバーは何故このような歌を歌ったのだろう。「Almost heaven, just Virginia」では意味も語呂もダメだったのか。
ウェストバージニア州民はこの歌を誇りにしており、州内の大学はアメフトなどのスポーツで勝つとこの歌を観衆が大声で歌う。しかし歌詞は虚偽に近い盛り方をしているわけで、バージニア州民がいつか横取りしようとしないか心配になる。
いすれにせよ、この後僕らは「バージニア州のシェナンドー国立公園」内を走るSkyline Driveに入った。
入り口付近には物凄い霧が発生しており、ゲートの係の人にこの霧は今日は晴れないのか尋ねると、「場所によります。晴れる場所もあるでしょう」とのこと。
走ってみてわかったが、本当にその表現通りだった。場所により霧に覆われ、場所により霧が覆わない。コンスタントに霧を生み出すのは勿論水分と上昇気流。アパラチア山脈全体で見られる光景であり、砂漠の山々では絶対起きないだろう現象だった。
このSkyline Drive、走る気になればその南に続くブルーリッジパークウェイと合わせて物凄い距離になるのだが「山道につき、踏破するには3日くらいかかる」とのこと。
なので、その10分の1の距離を走ったあと、僕らはパークウェイに並走するインターステート81号に、次いでインターステート26号に乗った。そして、その日の宿泊地であるアッシュビル(Asheville, SC)で一晩過ごした。
正直、このパークウェイ関係には特別な感動は覚えなかった。むしろウェストバージニア州に入るあたりの民家や人や車や家畜が存在する景色のほうが印象に残った。アメリカ南東部やアパラチア山脈周辺の州を走るときは、ぜひ州道や郡道レベルの道を走ってほしい。
目に痛いほどの緑、山々、畑、牛、そのすべてが「近代化を少し拒否しているような古さ」を醸しているのを感じると思う。何しろこのあたりはこのシリーズの冒頭で書いたようにキリスト教最右派・保守派が暮らしている。あながち間違ってはいないと思う。