日本の不動産価格は都市全体の利便性、特に交通アクセスの利便性と高い相関関係があるので、東京であれば必然的に都心が「一等地」となる。各都市も恐らく同じで、県庁所在地の駅前が各道府県で一番高いということで大体は間違いないと思う。勿論それに加えておしゃれな街だとか、公園が多いとか、道路の騒音が少ないとか様々な要素が加わり最終的な価格が決まるが、アメリカで最重視されながら日本ではほとんど意識されないことが一つある。そう、治安である。

僕が事務所兼住居として買った家は、ロサンゼルスから80kmほど南にあるオレンジカウンティーのAliso Viejo(アリソビエホ)市というところにあるが、ここを買った理由は明確だ。

 1)個人輸入代行の仕事が出来る最低限の都会性を持つ
 2)個人輸入代行に不可欠な日系の配送会社の集荷範囲にある
 3)治安が良い
 4)気候が温暖で晴れが多い(僕は雨と寒さが苦手で高温はかなり平気)
 5)採光に優れる
 6)上記を可能な限り全て満たしつつ予算に収まる価格である

要は、生活者として住むことと仕事のしやすさを両立をできる場所として最適な場所はどこかを調べ、1)と2)の観点でカリフォルニア州沿岸部がベストであり、3)と4)から南カリフォルニアがベストであり、その範囲内で5)と6)を基準に具体的な物件を探したわけだ。

さて、日本では殆ど意識しなくていい「治安」だが、アメリカでは本当にそんなに安全・危険に地域差が出るのだろうか。答えは「出る」。

僕ら夫婦の住むアリソビエホ市は、人口約5万人のうち70%が白人である。これはカリフォルニア州平均の40%の約1.8倍だ。世帯収入の中央値は約1000万円で、カリフォルニア州全体の600万円の約1.6倍になる。白人が多いということは、それだけ町の財政が良いことを意味する。そして収入が多い自治体は街の美化や安全面の強化に金(≒住民税)がかけられる。結果、道路や沿道の樹木等は常に綺麗に整備・管理される。そしてこのような町は、また金持ち(主に白人)を呼びこむ。

そして、住人に金があるので、市内の各コミュニティーの理事会は毎月住民からかなり高額な管理費を徴収する(よって僕ら夫婦には大変な「重税」である T_T)。これがコミュニティー内の公共部分の管理・補修などに使われ、常に美観が保たれている。コミュニティーによってはゲートを設けて住民以外は入れなくしているところも多く、部外者の侵入は容易でなく、仮に部外者が入れてもあまりに目立つため犯罪が発生しにくい。

こうして社会的・経済的に恵まれていることの多い白人が集まるところは治安が保たれ、白人が少ない地域は相対的に危険度が増していく。危険度が上がると地価が下がり、金持ちは更に出ていき貧乏人は更に流入し、結果犯罪がより増加するという負のスパイラルが生まれることになる。

また、犯罪者としては「獲物」があるところ、移動がしやすい場所、そして身を潜めやすいところに集まるので、商業地、夜間人がいなくなるダウンタウンや工場地帯、高速道路沿道、飛行場、そして治安維持に金をかけられない町などが常に狙われる場所になる。

ちなみに、Aliso Viejoの2012年の暴力犯罪発生率は人口1000人当たり0.88、窃盗系犯罪は同8.47であるが、ここと同じ郡にあり、距離にして20km程度しか離れていないAnaheim(アナハイム)市の犯罪発生率は同3.71、窃盗系は29.2となっている。アナハイムにはMLBのエンジェルス球場やディズニランドがあるなど大規模商業地としての側面があるので、犯罪者を誘引してしまうのであろう。しかしオレンジカウンティーは全体として非常に安全で、カリフォルニア州での犯罪発生率は最低であるのもまた事実なのだ。

最後に誤解のないように申し上げるが、僕は「白人が倫理的に優れ、他の人種が倫理的に劣るので犯罪を犯すのだ」などとは一切言っていない。治安は金で買うアメリカで、社会的・経済的に優位に立つ白人に金持ちが多いため、白人が集まる町は安全性が高いという事実を述べたにすぎない。そして僕は、自分や妻の身を守るために可能な限り治安のよい場所に住むという選択をしたのである。

これからアメリカに移住等をお考えで治安を事前に調べたい方は以下の「犯罪マップ」を見て頂きたい。


http://www.crimemapping.com/

それと、地域の安全性は道路と樹木の整備状況でわかるので、自分の住みたい街がいかに道路、沿道の樹木や芝生、そして公園などにお金をかけているかを判断の一助にされたい。