アメリカという甘美な幻想

南カリフォルニアはオレンジ郡に住むオヤジです。妻共々サラリーマンでしたが、2012年10月に移住してきました。個人輸入代行やコンサルタントを生業にした後、2016年からは会社員に。移住する遥か前から積み重ねてきた様々な「アメリカ体験」も含めて文章に残すためにこのブログを書いていますが、会社員復帰以降は忙しすぎて更新は稀に。自由の国、アメリカを含めた全体主義への流れ。これを絶対に食い止めましょう!

アメリカ東南部

米東南部を巡る理解の更新(2)

「アパラチアの山」に住む人々の政治的な力

東海岸に流れ着いたピューリタン(聖書原理主義者)。その後も人々は故郷を捨て、ドイツから、フランスから、オランダから、スイスから、そして他の欧州諸国から、新天地のアメリカに来て人生を築いていった。

こうした人たちの心のよりどころとなったのは、言うまでもなくキリスト教だったわけだが、多くの人が支持したのはカトリックではなく、プロテスタント、特にバブテスト派だったことは前回のエントリーで書いたとおりだ。故にアメリカ南東部は現在でもバプテストを中心としたプロテスタントが多数いるというのが歴史的な流れである。

このようにバプテストを中心とした極めて原理主義的なクリスチャンがここまで多く存在しているのはアメリカのみであり、世界的に見ても極めて珍しい傾向であるらしい。言語的にもこの地域は独特と言わざるを得ない。

西海岸も含め主要な大都市ならどこも大体そうであるが、アメリカ人の英語のアクセントは基本的に我々がテレビや映画などで聞く「アメリカン・アクセント」である。しかし最南部やアパラチアで聞いた英語はかなり違う。まるでブリティッシュ・イングリッシュのような発音なのだ。例えばwayやplayなどは「エイ」と言わず「アイ」と発音するのだ。


上の動画のようなものは「Appalachian English」と入れればいくつも検索に引っかかるが、とにかく凄い「訛り」だ。そしてやはりこれは、17世紀以降の入植者がもたらしたイギリス英語がここで純粋性を保てたためなのだという。色々なものが純粋性を保って保存されている地域、そこがアパラチアだ。

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ところで「Feel like going home」という曲があるのだが、これは20年前くらいに旅チャンネルがやっていた「栄光のマザーロード、ルート66」という番組のエンディングテーマになっていて、それを聞いて以来ドライブ旅行には欠かせない存在になっている。この曲の演奏者がThe Knotting Hillbillies(ザ・ノッティング・ヒルビリーズ)といい、あのダイアストレイツのマーク・ノップラーがこのバンドでギターを弾いている。

そう、バンド名に「ヒルビリーズ」とある。だが、その意味に着目したことはこれまで一回もなかった。ロカビリーの親戚くらいにしか思っていなかった。しかし、真の意味は全く違った。これは「山あいに住む無教養な田舎者」を侮蔑する言葉だった。この山あいとは基本アパラチア山脈を指す。これはどういうことなのか。

先日初めて出会った「レッドネック」という言葉も、同じく侮蔑語として今も存在している。これは、日中太陽に焼かれて首の部分が赤くなってしまう単純労働者のことを揶揄したものだ。これもどういうことなのか。何故山あいに住むという地理的特性や、外で働けば必ずそうなってしまう皮膚の反応を教養のなさに結び付けて侮蔑するのか。

侮蔑する側の評価はこうである。すなわち、アパラチアの人々は非論理的である。いかなる堕胎も同性婚も反対であるし、宗教原理主義が高じてビッグバンも進化論も否定する。また、アパラチアの人々は容姿、身だしなみに気を使わなさすぎる。常につなぎのジーンズにもじゃもじゃのひげ。そして歯がない。さらに、アパラチアの人々は野蛮である。銃を携行して町を歩き、人種差別的であり、いまだに南北戦争時代の南軍の旗を掲揚している。

典型的イメージ

誇張が激しいと言いたいところだが、調べた限りではある程度事実に基づいているようである。勿論見た目に関しては大きなお世話だが、レイプをされた場合でも堕胎してはならないという考えが本当ならば、僕にもちょっとついていけない。

で、本当にそんな考え方をするのか、といえば、するのである。そして現に、この考えを具体的に法制化するという動きがあって、今現在全米16州で中絶を制限する州法案が出され、複数の州で可決されているという。しかもアラバマでは、つい先日レイプや近親相姦でも中絶出来ないという州法が本当に通った。これ、本当なのだ。。。いくら何でも行き過ぎだ。そんな思いを禁じ得ない。


ちなみに、アラバマはアパラチア諸州には含まれないが、そのかわりディープサウスと言われる地域に属し、アパラチア諸州の一つであるテネシー州と境を接し、やはり聖書原理主義的な場所である。

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キリスト教が誕生し、まずカトリックとプロテスタントに分かれた。プロテスタントもいくつか分派し、そのうち最も聖書原理主義的なピューリタンがアメリカに流れついた後、奴隷解放を巡って南北2派に分かれた。この聖書原理主義の「総本山」は、言うまでもないが南部側(テネシー州ナッシュビル)にある。

日本も含む他の国のプロテスタントの中で、就中バプテスト派の中で、アメリカ(南部)のような、私の視点では常軌を逸したといえるような過激な思想を前面に出すところはまずない。日本のバプテスト教会はアメリカの過激ぶりを批判さえしている。つまりアメリカのバプテストだけがガラパゴス的に生き残り、純化したような状況なのだ。

そして、このバプテストを含む保守的なプロテスタントがアメリカの25%を占める。だからアメリカの大統領になるには、この人たちを無視することはできない。この人たちはとんでもない「大勢力」なのだ。そんなことは日本に住んでいると気づかない。それはそうだ。アメリカにいても意識しなければ気づかないのだから。

これからしばらく、記事を山ほどアップしていきます

どうも。お久しぶりです。

今日から急に多作になることを予告します。書き溜めていたものを徐々に放出していくことにしたからです。何故書き溜めていたかと言えば、それは忙しい中で何かを書きかけてはそれを放置するということを繰り返していたからです。

 

何故今これを放出するかと言えば、山ほど溜まった書きかけの断片を仕上げる時間が出来、かつ仕上げる意欲が続いたからに他なりません。いくら忙しくても、その気になればブログ記事の一本や二本、いや、五本や六本書けないわけがありません(実際は十数本…)。

 

この「これから山ほどアップする記事」において、取り上げたテーマは様々ありましたが、今日はその一つに軽く触れておきたいと思います。

 

実は、427日から54日までアメリカ南東部の旅に妻と行ってきました。目的はまだ訪問したことのない州に行き、有名な観光スポットを観、個人的に関心がある地域や道路を走るといういつもの軽いものでした。

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ワシントンD.C. リンカーン記念堂

 

ところが、ジョージア、サウスカロライナ、ノースカロライナ、バージニア、メリーランド、デラウェア、ペンシルベニア、ウェストバージニアの8州とワシントンD.C.を巡ったこの旅は、当初思ってもいなかった旅になりました。

 

この旅で、アメリカ東南部という地域の特性やその歴史に関して、今までにない洞察を迫られたのです。そのきっかけは道中幾度となく見かけた(バプテスト)教会でした。「なんでこんなに(バプテスト)教会が多いの?」という疑問への答えは、僕が持っていたアメリカ東南部に関する浅い知識の中には存在していませんでした。そして、本当に異常といえるほど教会が多かったので、「すぐにこの疑問を解決したい!」と思わないではいられませんでした。

 

こんな思いから、僕は清教徒革命のころのアメリカから調べ直すこととし、結果的にこの地域の内情も少し深く知ることになったのです。だから僕は、この旅に関して二つのテーマでブログ記事を書くつもりです(実際にはもう書き終わっていますが)。一つはお気楽な旅行記で、もう一つは東南部の歴史や特性への考察です。

 

かつての僕ならば、たとえばウェストバージニアに行ったことに関連付けてジョン・デンバーの歌った「カントリーロード」を引き合いに出したでしょう。いや、今回もそれはします。するけれども、もう「いい歌だ。いい歌詞だ」というお気楽な感想だけで済ますことは出来ないのです。


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 山深いウェストバージニア。本当に「殆ど天国」といえる場所なのか…。

それは、ジョンが「Almost heaven(もう天国のようだ)」と歌ったウェストバージニアが、そしてアパラチア山脈一帯の州が、決して天国ではないことを知ったからです。現代ではやや信じられない事実や、または存在すべきと思えない事実がそこにはあったからです。「聞いてはいたけれど、まさかここまでとは…」という驚き。あれです。

 

勿論僕はそんな「偏見」を持って旅に行ったのではありません。むしろ無邪気に、ストレス発散だけを目的にしていたのです。でも、カリフォルニアの「暗部」がパームツリーと太陽のイメージで糊塗されるように、日本が「おもてなしの国」の顔を表に持ちながら、そこには世界的にも特異な同調圧力と排他性があるように、アパラチア諸州にも牧歌的なイメージとは裏腹な、浅い知識では伺い知ることが出来なかったネガティブな側面もあったのです。

 

そういった深そうな話も阿保っぽい話も含め、これから猛然と記事を載せていきます。

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