アメリカという甘美な幻想

南カリフォルニアはオレンジ郡に住むオヤジです。妻共々サラリーマンでしたが、2011年にグリーンカードが当たり、アメリカへの憧れに抗しきれずに2012年10月に移住してきました。個人輸入代行やコンサルタントを生業にした後、2016年からは会社員(人事、法務など)に。移住する遥か前から積み重ねてきた様々な「アメリカ体験」も含めて文章に残すためにこのブログを書いていますが、会社員復帰以降は忙しすぎて更新は稀に。。。面目ない。

暮らして見えるアメリカ

米東南部を巡る理解の更新(3-最終)

トランプ支持の源泉

前回からやたら時間がかかってしまい申し訳ない。忙しいのはいつものことだが、今回はパソコンの不調などもあって遅れてしまった。

トランプ大統領が、主としてアメリカの中流またはそれ以下に属する「白人保守層」から支持されて勝ったことは誰でも知っていると思う。しかし、その真の理由/原因についてはなかなか知ることはできないと思う。実際、父と兄が大統領だったジェブ・ブッシュやマルコ・ルビオなどを抑え込み、保守党内のレースで下馬評を覆せたのは何故か。これは僕にも疑問だった。

でも、前回述べたように、アパラチア以東の人々の一般的な特性、すなわちキリスト教原理主義的な考え方とその影響力を知って、その理由が見えた。すなわち、中流以下の白人保守層の一般的な思想、理想、希望、欠乏感、不満を最もくみ取れたのがトランプだった、ということだ。

この白人保守層の人々の多くがプロテスタントであり、大なり小なり大きな政府反対、銃器規制反対、中絶反対、同性結婚反対といった考え方に立つ。最右派になると進化論もビッグバンも認めないほどなだ。だから、昨今のアメリカは彼らには総体としてその反対に進んでいて「リベラルすぎる」ように見えており、大いに苛立っていた。

「自分たちの経済的苦境は我々の仕事を奪う移民のせいではないか?このような状況で何故オバマは健康保険の加入義務化などをするのだ?我々の税金を何故自分たちの意向に反して使われなければならない?誰に使っている?外国人?不法移民?異教徒?ふざけるな!」

こうした不満が募る中で、今までの保守政治家にさえ飽き足りなくなった中流以下の白人たち(多くの場合プロテスタントたち)とって、トランプは最も「良い候補者」だった。

当選して以降の言動からも、トランプが白人保守層の受けを意識していることは確かだと思う。たとえば中東から移民に関する無神経な、というかかなり野蛮と言っていい彼の政策を皆さんは覚えているだろう。テロ支援国の人間はグリーンカードの保有者お含めて一切アメリカに入国させないという、あれだ(後から撤回してはいるが)。

アメリカ(の白人たち)の利益を守る政治家であると思ってもらうには、仕事を奪う外国人の入国を規制する政策は当然打ち出したいところだ。しかもその外国人がイスラムならば、これ以上の大義名分はない。何故って、異教の外国人の入国を阻止しようとするトランプをプロテスタントが支持しないはずがないのだから。この際、政策が失敗または未遂に終わったかどうかは重要ではない。トライしないで信用を失う方がトランプには怖いのだから。

トランプは、その意味でしたたかだった。そもそも支持基盤はプロテスタントなんだから、そこにターゲティングした姿勢を見せるのはまあ当然のことだった。

僕が今「馬鹿だなぁ」と思うのはマスコミ、特にリベラルマスコミだ。多くのTVや新聞社は基本民主党寄りなので、トランプ出現以前から共和党側を叩いていたが、トランプが出てきて大慌てしダブスタ報道に拍車がかかった。

たとえば「不法滞在の移民を国外追放する」のは合法である。当然の措置とさえいえる。これを人道的観点から阻止したいなら正攻法でそう言えばいいのに、リベラルは対象者が「不法移民」であることを糊塗し「移民全体」に印象操作するのだ。公平に見て、トランプはそんなことは一切言っていない。

このSNSの時代、このような言論の矛盾や不公正はすぐにほじくり出される。結果、保守派の心に火をつけ、大統領選でのトランプの勝利や現在までの地位の安泰へと導いてしまった。

保守でもリベラルでもいいけど、ダブスタはもうやめないと。もう情報はマスコミだけのものじゃない。僕らは情報を与えられるだけの立場ではなく、情報を見抜き、自ら生み出すこともできる。近親相姦で妊娠しても中絶を許さない保守派や、北朝鮮を含む共産主義国家に手を貸すような左翼まで、アメリカには本当に多くの人たちがいる。僕はどちらに加担するのもいやだから正確で公正な情報が必要だ。「真実」や「公正さ」は「主義」の上にあるべきものだと僕は信じる。

ああ、最後はマスコミ批判というかダブスタ批判で終わっちゃった。以上、アメリカ東南部を巡る僕の理解内容の更新にかかるレポートでした。

米東南部を巡る理解の更新(2)

「アパラチアの山」に住む人々の政治的な力

東海岸に流れ着いたピューリタン(聖書原理主義者)。その後も人々は故郷を捨て、ドイツから、フランスから、オランダから、スイスから、そして他の欧州諸国から、新天地のアメリカに来て人生を築いていった。

こうした人たちの心のよりどころとなったのは、言うまでもなくキリスト教だったわけだが、多くの人が支持したのはカトリックではなく、プロテスタント、特にバブテスト派だったことは前回のエントリーで書いたとおりだ。故にアメリカ南東部は現在でもバプテストを中心としたプロテスタントが多数いるというのが歴史的な流れである。

このようにバプテストを中心とした極めて原理主義的なクリスチャンがここまで多く存在しているのはアメリカのみであり、世界的に見ても極めて珍しい傾向であるらしい。言語的にもこの地域は独特と言わざるを得ない。

西海岸も含め主要な大都市ならどこも大体そうであるが、アメリカ人の英語のアクセントは基本的に我々がテレビや映画などで聞く「アメリカン・アクセント」である。しかし最南部やアパラチアで聞いた英語はかなり違う。まるでブリティッシュ・イングリッシュのような発音なのだ。例えばwayやplayなどは「エイ」と言わず「アイ」と発音するのだ。


上の動画のようなものは「Appalachian English」と入れればいくつも検索に引っかかるが、とにかく凄い「訛り」だ。そしてやはりこれは、17世紀以降の入植者がもたらしたイギリス英語がここで純粋性を保てたためなのだという。色々なものが純粋性を保って保存されている地域、そこがアパラチアだ。

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ところで「Feel like going home」という曲があるのだが、これは20年前くらいに旅チャンネルがやっていた「栄光のマザーロード、ルート66」という番組のエンディングテーマになっていて、それを聞いて以来ドライブ旅行には欠かせない存在になっている。この曲の演奏者がThe Knotting Hillbillies(ザ・ノッティング・ヒルビリーズ)といい、あのダイアストレイツのマーク・ノップラーがこのバンドでギターを弾いている。

そう、バンド名に「ヒルビリーズ」とある。だが、その意味に着目したことはこれまで一回もなかった。ロカビリーの親戚くらいにしか思っていなかった。しかし、真の意味は全く違った。これは「山あいに住む無教養な田舎者」を侮蔑する言葉だった。この山あいとは基本アパラチア山脈を指す。これはどういうことなのか。

先日初めて出会った「レッドネック」という言葉も、同じく侮蔑語として今も存在している。これは、日中太陽に焼かれて首の部分が赤くなってしまう単純労働者のことを揶揄したものだ。これもどういうことなのか。何故山あいに住むという地理的特性や、外で働けば必ずそうなってしまう皮膚の反応を教養のなさに結び付けて侮蔑するのか。

侮蔑する側の評価はこうである。すなわち、アパラチアの人々は非論理的である。いかなる堕胎も同性婚も反対であるし、宗教原理主義が高じてビッグバンも進化論も否定する。また、アパラチアの人々は容姿、身だしなみに気を使わなさすぎる。常につなぎのジーンズにもじゃもじゃのひげ。そして歯がない。さらに、アパラチアの人々は野蛮である。銃を携行して町を歩き、人種差別的であり、いまだに南北戦争時代の南軍の旗を掲揚している。

典型的イメージ

誇張が激しいと言いたいところだが、調べた限りではある程度事実に基づいているようである。勿論見た目に関しては大きなお世話だが、レイプをされた場合でも堕胎してはならないという考えが本当ならば、僕にもちょっとついていけない。

で、本当にそんな考え方をするのか、といえば、するのである。そして現に、この考えを具体的に法制化するという動きがあって、今現在全米16州で中絶を制限する州法案が出され、複数の州で可決されているという。しかもアラバマでは、つい先日レイプや近親相姦でも中絶出来ないという州法が本当に通った。これ、本当なのだ。。。いくら何でも行き過ぎだ。そんな思いを禁じ得ない。


ちなみに、アラバマはアパラチア諸州には含まれないが、そのかわりディープサウスと言われる地域に属し、アパラチア諸州の一つであるテネシー州と境を接し、やはり聖書原理主義的な場所である。

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キリスト教が誕生し、まずカトリックとプロテスタントに分かれた。プロテスタントもいくつか分派し、そのうち最も聖書原理主義的なピューリタンがアメリカに流れついた後、奴隷解放を巡って南北2派に分かれた。この聖書原理主義の「総本山」は、言うまでもないが南部側(テネシー州ナッシュビル)にある。

日本も含む他の国のプロテスタントの中で、就中バプテスト派の中で、アメリカ(南部)のような、私の視点では常軌を逸したといえるような過激な思想を前面に出すところはまずない。日本のバプテスト教会はアメリカの過激ぶりを批判さえしている。つまりアメリカのバプテストだけがガラパゴス的に生き残り、純化したような状況なのだ。

そして、このバプテストを含む保守的なプロテスタントがアメリカの25%を占める。だからアメリカの大統領になるには、この人たちを無視することはできない。この人たちはとんでもない「大勢力」なのだ。そんなことは日本に住んでいると気づかない。それはそうだ。アメリカにいても意識しなければ気づかないのだから。

米東南部を巡る理解の更新(1)

バプティズムのメッカとしてのアメリカ東南部


これからキリスト教の話をする。アメリカを知るうえで絶対欠かせない知識だとは思うが、はっきり言って関心のない人には苦痛でしかないと思う。そのつもりで。

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アメリカ東南部については、フロリダ以外行ったことはなかったとはいえ少しは知っていたつもりだった。東部
13州とはかつてのイギリスの植民地であり(下表参照、太字は今回訪問)、1776年に独立が宣言され、1860年に南北戦争が起きた、といった中学高校で習うようなこともある程度は覚えていたし、アメリカに住んでいれば東南部一帯は政治的にかなり保守的であることも普通に知ることにはなる。


ニューハンプシャー、マサチューセッツ、ロードアイランド、コネチカット、ニューヨーク、ニュージャージー、ペンシルベニア、デラウェア、メリーランド、バージニア、ノースカロライナ、サウスカロライナ、ジョージア


しかし、アトランタに降り立ち、レンタカーを駆って大西洋に向け出発して間もなく、緑深い森の中を続く道路沿いに小さく質素な佇まいの教会 - その9割はBaptist Church(バプティストチャーチ)と書かれていた - 5分ごとに現れる様は異様だった(そしてこの光景は旅が終わるまで、基本変わらなかった)。


Church_in_SC

典型的バプテスト教会。画像検索でみつけたもの。車を降りて撮影することは躊躇われた。


「自分が米南部や東部に関して持っている知識、例えばディープサウス地域の黒人差別や保守性、1620年にメイフラワー号が到着した史実、そして1649年にイギリスで清教徒革命が起きた史実などとこの光景には何か関係があるのだろうか」


旅を始めて早々に、僕はそんなことを考えた。教会の多さに驚いてしまい、しかも関心を一旦根こそぎ持っていかれるなんて、旅を始める前までには予想もしていなかったことだった。

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ここで中学だったか高校だったかに習った「メイフラワー号アメリカ到着」やイギリスでの「ピューリタン(清教徒)革命」を簡単におさらいしたい。


ピューリタンとは、16世紀後半以後イギリス国教会と対立し、徹底した宗教改革を主張したプロテスタントの一派、正確にはカルバン派の人々だ。名前の通り聖書内容に対して「ピュア(原理主義的)」だから「ピューリタン」と呼ぶようだ。


清教徒革命はイギリスに留まったピューリタンがイギリスで起こした革命であるが、宗教の自由を求めて海外に新天地を求めた人もおり、その関連で最も有名な史実こそが1620年のメイフラワー号のアメリカ(マサチューセッツ)への到着というわけだ。

しかし、その史実だけではアメリカ南東部に多数の(バプテスト)教会があることの説明にはならない。そもそもイギリス人(ピューリタン)たちは、何故アメリカに信仰の自由を求めてやってこなければならなかったのか。その背景は何なのか、そこからして僕は詳しいことを知らなかった。かつて学生であり、受験生であり、20代の僕は塾で中学生に社会科も教えていたのになんと浅い知識だろうか。

旅の途中も旅から戻ってからも、僕はこの疑問を晴らすために色々調べた。それを以下に、なるべく端折って書くこととしたい(それでもかなり長いよ)。


 ***


1500年代前半、ドイツのマルティン・ルターらによってカトリック教会の改革を求める宗教改革運動が起きた(ルター、懐かしい。カトリック教会が行った「あなたの罪を金でなかったことにしましょう」っていうあの「免罪符」とセットで覚えたのだが、諸兄は覚えておいでだろうか)。


この時、ルター派に加え、ルターの言い分にさえ不満な急進派も加わって激烈にカトリックに対して抗議(英語でプロテスト)が行われたのだが、この抗議者たちのキリスト教に対する解釈や態度ないし思想並びにその派閥を「プロテスタント」と呼ぶようになったのだそうだ。


ザビエル

こちらはザビエル(スペイン人)。同じ1500年代のキリスト者だが、こちらはカトリック


ルターたちはこの抗議を契機に聖書に立ち返る福音主義を唱え始め(よってプロテスタントはイコール福音主義的という図式が成り立つ)、北方に広まり、1500年代中期にはデンマーク・スウェーデン・ノルウェーで国教となっていった。

また、ドイツの動きとほぼ同時期にスイスでも宗教改革運動が起こり、ジャン・カルバン(これも教科書に出てきたはず)が「自分の(鍛冶屋とかパン屋とかの)仕事を全うしろ。それでも神やイエス様に身を捧げたことにはなる。ただし生活は質素で禁欲的にな」という教えを説き、これがフランス・オランダ・イギリスへ広がった。


このカルバン派こそが今のアメリカのバプテスト派閥の最大勢力となった。以下は、ここまでの話に基づく系統図である。

 プロテスタント(福音主義=ルター)
  
バプテスト(強い聖書原理主義的な思想)
   
ジェネラル・バプテスト(アルミニウス)
   
パティキュラー・バプテスト(ジャン・カルバン)


上のアルミニウスという人は、「この世に生を受けた人ならば、キリストの恵みによって、少なくとも神からの呼び掛けや救いへの招きに対して応答する能力を持つ」と考えた人だという。要は信じれば誰にでも神の救いはある、ということだ。

 

一方カルバンは、「神は救済する人を予め決めている。よって教会にいくら寄付とかをしても救済されるかどうかはわからない。神はの人間の意思や行動で左右されない」と考えた人(予定説というらしい)なのだそうだ。

 

John Calvin

ジャンカルバン(Wikipediaより)


なんだこれは。厳しすぎるぞ。なんでこれが大衆に支持されるんだ?といぶかしく思った諸兄。僕もそう思った。実際、予定説では何をしても運命が変わらないことになるので、当時それを真に受けた人々は自分が救われるのかどうかを確かめたがったのだそうだ。そこにカルバンがぶつけてきた理屈が「職業召命説」だった。


「仕事は神から与えられたものであり、仕事に励み成功する人を神が救済リストから外しているはずはない」という考えだ。当時の宗教観では労働や蓄財は卑しいものとされていたのでこの考えは斬新であり、しかも一般の人々にモチベーションを与えた。そしてこれは資本主義には大変都合のいい解釈でもあった。


こうしてカルバンの思想は1500年代後半にイギリスにも波及し、腐敗・堕落(?)している英国国教会の内部でピューリタンと呼ばれる改革派が出現。イギリス国教会から分離することを主張する者と分離しないで内部教会改革を志す者とに分かれた。後者こそがアメリカにメイフラワー号で移民してきたピューリタンたちだった。


mayflower

Mayflower号とピューリタン(History.comより)


1600年代に入り大西洋を横断することが当たり前になった時代。カルバンに影響されたフランス人やオランダ人もアメリカに来たし、ルターに影響されたドイツ人たちも来た。こうして様々な国からプロテスタントの人々がアメリカにやってき、13のイギリス植民地が形成されていった。


驚いたことにイギリスは、各植民地に対しアパラチア山脈の西側を勝手に開拓してはならないと命じていたという(僕はこの史実を全く知らなかった)。このため、ピューリタンの入植からアメリカの独立までの長い間、彼らはアパラチア以東に居所が固定されていた。

そんな中で、故郷を捨てアメリカで人生を築いていくことになった各国出身の人たちの心のよりどころとなったのは、言うまでもなくキリスト教、正確にはプロテスタント、中でもカルバン主義であるパティキュラー・バプテストだった。


「額に汗して働くことは美徳であり、そういう人こそ神が救済してくれる」。そんな教えはこのアパラチア以東の地に住む彼らにとって辛い生活を頑張りぬける源泉になったのだろう。だからこそ、僕がドライブ中に見た協会は、10のうち9つがバプテスト教会だったのだ。「やけにバプテストが多いな」と思っていたら、そういうことだったのだ。

 

最後に、アメリカのバプテストのうちパティキュラー・バプテストの方は、さらに南部北部の二派に分かれていることを説明せねばなるまい。別れたのは1800年代半ば。そう。南北戦争の前だ。奴隷制を巡って対立し、分派したのだ。こんなに信心深い人たちが「奴隷は存在してもいい(とか悪い)」とかやってるわけで、人間は非常に訳が分からない存在だと思わざるを得ない。


はー、やっと説明が終わった。。端折ったわりに長すぎるだろう、我ながら。。。

 

ちなみに、プロテスタントであるバプテストの教会は非常に質素である。流麗な装飾が施された豪華な教会というのは基本的にその原理原則上ありえない。なぜならそういうのはカトリックの領分だからだ。欧州の教会が観光地化するほど美しいのは、欧州だからではない。カトリックだからだ。

バチカン、サンピエトロ寺院
(Wikiより)バチカンのサンピエトロ大聖堂。カトリックの総本山。絢爛豪華。

カリフォルニアの住宅事情 ‐ 4畳半があったなら

サンフランシスコはもとより他のカリフォルニアの主要地域と比較してみても、あるいは世界の大都市の比較してみても、実は東京は相当暮らしやすいということがわかります。

野菜や果物など確かに高いですし一平米当たりの家賃も安くはありませんが、東京なら風呂のないアパートは
2万円台だってあるし、風呂付でも4畳半なら4万円台からありますよね。アメリカにはそういう選択肢がないんですよ。4畳半に住むという発想自体がないから。

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2016年当時、売手側が「盛り付け」した現在の我が家のリビング。ローン残りあと27年。。。

アメリカで最も狭いフロアプランは「Studio」と言うようです。基本トイレも風呂も台所も全部含まれている仕切りの一切ない部屋のことで、日本の「押入れがない、またはごく小さな収納しかついていない一間だけのアパート」のイメージに最も近いものです。


単身で住む場合ならStudioで十分ですが、では一体何平米からStudioはスタートするのか。調べてみるとオレンジカウンティ界隈では大体190平方フィート後半から200平方フィートくらいからでした。平米で言うと18.6㎡であり、畳でいうと11.5畳となります。最小で11.5畳か。やはり広すぎません?


11.5畳のStudio、サンフランシスコだと大体18万円くらいからでしたので、面積半分なら9万円で済みます。4.5畳で計算すれば7万円くらいになります。これならなんとかなりますね。

ところがアメリカでは4.5畳の単位でアパートを作るという概念がない。でも「18万なんて払えない」という人も勿論大勢いますから、例えば3部屋ある家を3人で借りるといった「ルームシェア」が行われます。

これだと34万円の家賃を3人で分担できますので、Studio18万円払えなくともサンフランシスコで生きていけます。まあ僕はサンフランシスコもシェアすることも両方嫌ですが。


「え?3LDKになったら2LDKより高いんじゃないの?」と思われた方、実はそうでもないのです。アメリカは(いや、日本でも)、同じ地域の同じ外部環境なら、通常は部屋数ではなく広さが家賃の基準になるので、同じ家賃で2LDK3LDKも普通に存在し得るのです。


ちなみにOCですが、全域検索の結果、300平方フィート(28㎡≒17畳)のStudioで家賃13万円というのが最安値でありました。でも、エアコンもなく、洗濯機置き場もありませんでした(ちなみに、大家に黙って壁に穴をあけることは無理なので 大家に告げても無理だけど - 独自にエアコンを設置したくてもそれはできません)。


選択肢が豊富となる賃料帯は15万円くらいからで、平均的な広さは500平方フィート(46㎡≒28畳)くらいのようです。こうした「安いところ」にほぼ共通する特徴は、洗濯機が置けるスペースが部屋の中になく、その代わりに敷地内にコインランドリーがあるというものです。また、駐車スペースは青空駐車場となっているか、そもそも駐車場がないため路上駐車しかできないところもあります。


こうしたアパートがもし4.5畳単位で造られていたなら、賃料は24千円で済む計算になります。多少不便でも汚くても、安く済む選択肢があればいいのにと本当に思いますが現実にはないので、これからアメリカに来る皆さんは、賃料相場や希望する地域の治安などを事前によく調査することをお勧めします。


治安は犯罪マップなどでもわかりますが、Google Earthでその住所周辺を見てみるだけでも雰囲気がわかりますよ。だいぶ前に書いたエントリーで述べたように、花や芝生がよく整備された街は治安がよく、そうでないところは治安が悪い。この法則はほぼ鉄板です。

カリフォルニアの住宅事情‐サンフランシスコという狂気

前回で終了したアメリカ東南部の旅行記の後は、その地域の様々な意味での特性などに関する考察を載せる予定でしたが、ちょっと違う話から書いてみたいと思います。


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タバコの価格の話を取り上げた際、「サンフランシスコで4人家族が普通に暮らすには、世帯年収1千万円ではもう無理だそうです」と書きましたが、もう「無理」とかそういう次元じゃないみたいですよ。BBC20187月のネットニュースで、既にこんなことが書かれてました。

 

“サンフランシスコとその近くのSan Mateo郡とMarin郡では、4人家族の世帯年収が117,400ドル(約1300万円)が「低所得」とみなされ、73,300ドル(約800万円)では「非常に低い所得」とみなされる。この数値はアメリカで最高となっている”


は?1300万円が低所得?800万円で「非常に低い」って何?そんなバカな話、あります?これがあるんです。家賃が高すぎて話にならないわけです。
 

サンフランシスコの高賃料は、6桁(10万ドル≒1070万円以上)の収入を得ている家族を「低所得」と規定する状況に至っている。2ベッドルームアパートの同市での適正市場賃料は、1ヶ月あたり3,121ドル(≒33.5万円)で、2008年の1,592ドルのほぼ2倍になっている。一方、オハイオ州シンシナティでは845ドル(9万円)だ。 この住宅価格の差(270%)は、家族の平均収入の差(50%)よりはるかに大きい。(同ウェブサイト記事より)

 

というわけで、カリフォルニア、就中サンフランシスコエリアでは人々の賃金は高騰しているのですが、それ以上に賃料や住宅購入価格が上がってしまっており、それを主要な原因として「4人家族の世帯年収が117,400ドル(約1260万円)が低所得とみなされ、73,300ドル(約790万円)では非常に低い所得とみなされる」という状況に至ったというわけです。

 

なんだかピンと来ませんので、世帯年収をわかりやすく1300万円とし、扶養家族2名で税金社会保険関係控除率が大体25%くらい(本当はもっと取られるかも。401Kとかで源泉されるお金とか含めてないし)としてシミュレーションしてみましょう。額はすべて年間の額とします。

 可処分所得:975万円(1300万×75%)

家賃

400万(34万円×12

食費

60万円(三食全て家で作ったとして月に5万円×12

車関連

96万円(普通のセダンをリースすると毎月2万円。燃料代も2万。旦那さんと奥さんで1台ずつ必要なので毎月8万×12か月)

水道光熱

48万円(上下水道が月7500円、電気7500円、ガス5千円)

通信費

36万円(テレビ&ネットが月1万円、スマホ4台で月2万円)


ここまでで640万円が使われた。残金は335万円。


これに加え、消耗品費、被服費、医療費 - 仮に健康保険は全額会社負担、支払うのは通院した場合の自己負担分のみとしてもなお - などは、いくら払いたくないと言っても払わざるを得ないだろう。これらを合計30万でやりくりすると(恐らくこの見積もりは甘すぎると思うが)、残金は305万円(学費は高校まで公立ならただ)。

車の保険は年費用を一括で支払うが、カリフォルニアで何かあったときに入っているべき保険の内容を考えると、ミニマムでも15万円(但し2台カバー)はかかると考えるので、残金は290万円。


勿論まだ生命保険代は入れてないし、遊興費も入れていないし、車、テレビ、パソコン、家具などの買い替えや修理費用も含めていない。アメリカ人が大好きなペット(基本犬)の食費や健康維持費も入れていない。車のリース時は大体普通のセダンで20万は払うことになる。

1300万円の年収なのに、確かにきつい。やっぱり家賃の400万が尋常じゃない。


それじゃぁ年収800万円だったらどうなるんでしょう。

税と社会保険関係の控除が20%として可処分所得は640万円。あれ?これだと上の家賃から通信費までの支出合計だけで640万円だから、もうこれ以上の支払いは無理。破綻だ。なんてことだ。

カリフォルニアに住みたい方々、サンフランシスコ界隈の住宅事情(値段)は最悪のようです。南カリフォルニアならまだなんとかなります。次回はそのあたりを書いてみましょう。

カリフォルニアの凶暴な花粉症アレルゲン

南カリフォルニアは11月から2月、3月くらいまで雨季だと言われていますが、僕が日本から越してきた2012年秋から2016年秋まで、本当にやばいほどの雨不足だったんです。2013年夏ごろから、芝生に水をやることを制限する条例を出す自治体も多数に上り始め、そもそも芝生から(水があまり要らない)他の植物に植え替える自治体さえあったのです。下の水不足マップを見れば、その深刻さがわかるでしょう。

2015日照りマップ画像

OCは南西部(海側)にあります。酷い日照り地域に入っています


ところが2016年の12月に様相が一変しました。時に洪水を起こすような豪雨も数回含め、とんでもない雨量をもたらした雨季らしい天候が翌年の3月初旬くらいまで続いたのです。そ
の結果、雨季終了後の春はどんな春になったかといえば、草花が咲き乱れる美しい春になりました。そんな春を体験するのは渡米後初めてのことでした。


2017年から2018年の雨季はまたしょぼい雨季になりましたが、20182019のシーズンは、これまでの最高(最悪)と言えるほどの雨季になり、またもや大量の草花が咲き乱れ、しかもなかなか枯れない春となりました。というか、今でもそういう状態なんです。


春先、ローカルニュースは何度もこの大雨が生み出した現象を取り上げていました。例えば、カリフォルニアの南東部側にあるレイクエリシノア(Lake Elisinore)という町を囲む山の斜面に大量のケシが咲き乱れ、これを見物する人のおかげで渋滞が起きたというニュース。

僕は何度もこのレイクエリシノアという町に行っていますが、春先にケシが咲いている風景など記憶にありませんでした。そしてそのニュースを聞いて慌てて訪問してみましたが、確かに山肌が一面ケシで覆われていました。

USA-Today_LAKE-E-POPPY
USA Todayの記事より

この大雨で2012年以降初めてカリフォルニアの全域で水不足が解消されたという喜ばしいニュースもあれば、花粉が例年になく大量に舞うことになり、人々がアレルギー症状に苦しんでいるというニュースもありました。


その最大の犠牲者が僕であることは間違いない。

そう確信したのはアメリカ東南部の旅行を終えた直後の54日でした。

 ***


禁煙関連のエントリー中に書いたように、今年になってから僕の健康状態は最悪でした。咳、鼻の奥の不快感、微熱、寒気(さむけ)、筋肉痛のような風邪様の症状が1週間単位でぶり返し続け、加えて経年劣化した歯(クラウンやインレー)の放置とストレスを原因とした顎関節症が2月中旬に発症(1か月継続)。4月上旬には38.6度の熱が出た本物の風邪で3日間寝込みました。


この大風邪を引いたとき、僕は上述したアメリカ東南部の旅行に427日から54日まで妻と共に行ってくることを計画しており、実際飛行機の予約を終えたばかりでした。これはまずいと思い、健康を取り戻すことに注力しようとしました。


顎関節症は歯の治療で治り、「本物の風邪」も1週間ほどで治ったと自覚できましたが、旅行に出かける426日を迎えても、風邪様の症状は残っていました。ところが何とか体調を70%くらいまで上げて東海岸に旅行に行ってみると、それ以降カリフォルニアに戻るまでの間風邪様の症状は一切出ませんでした。


54日夜、アトランタから自宅に戻ってきた僕は、鼻の奥に変な感じを覚え、同時に咳が出始めたことに気づきました。東南部ではおさまっていた症状がOCで復活したことに気づいた瞬間でした。


 ***


僕は日本にいたころから、低気圧と寒暖差により風邪のような症状を主訴として体調を壊していた自覚がありました。アメリカに来てから数年の間も、体調不良は多くの場合低気圧と寒暖の差の影響だということが自覚できていました。しかし、2016年にサラリーマンになって以降、その不調ぶりは一段次元が変わりました。重く、長く、容易にぶり返すのです。

 

僕は長い間、「自分の理想に反してサラリーマンになったこと」や「自分のネガティブな思考がサラリーマン環境下で助長されてきたこと」により「自律神経系などが不調になっていること」が原因だと考えてきました。なので、昨年末に人生初めて「くしゃみ10連発」をしたときは、僕の健康レベルが低値安定しているところに寒さ(寒暖の差)や天気の悪さが重なったためこんなアレルギー症状が出たんだろうと考えました。

ですが、年が明けてから典型的な風邪のような症状が4か月も断続的に続き、しかも症状はさらに増悪しました。継続期間が普通じゃない。しかも増悪している。なんでだ。

自問した結果、ちょっと信じられない業務上の事案(事件)が1月から毎月連続して起きており、その間過去最高の繁忙レベルだったのでさらに基礎体力や抵抗力が落ちたのだろう、と思っていました。

が、東海岸に旅行に行っている最中はそれらの症状がぴたりとおさまっていたのでした。
こうした事実から、私の不調は場所に起因し、かつそれは2016年以前には僕の身の回りになかったもの、即ち特定の花の花粉のせいだとほぼ断言できるのです。

 ***

その花粉をまき散らしている花は、この春大量に咲いていつまでも枯れない花。その名をブラックマスタードと言います。この花の名前をなんとか特定し色々調べてみたところ、情報が少ない花ではあったのですがアレルギーを引き起こす
「狂暴度」が高いことはしっかり確認できました。


2017年春。この花が咲き乱れるところを写真に撮って、このブログに載せていました。この花の名前を知らなかった僕は、「アメリカ版の菜の花」と勝手に命名していました。美しい風景だと思いながら。


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2017年の春の様子

今年は2月下旬ころ咲きだし、3月下旬にピークを迎えましたが、それ以降もまだまだ咲いていることに感心していたのです。ある集団が枯れても違う集団が咲き出すことを喜んでいたのです。ずっと美しい光景を作ってくれるこの黄色い花を愛でていたのです。


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今年3月のブラックマスタード。この時点で隆盛を誇りつついまだ栄えているという。

それが、私の健康を著しく損ねる花粉を長期間まき散らしていたとは。いや未だに、6月中旬を迎えるのにまだまき散らしているとは(ゾンビか!)。実は外来種だったブラックマスタード。カリフォルニアのネイティブの花を存続危機に陥れるほど爆発的に咲いています。そうしたことを知ってから、この花の憎らしさは筆舌に尽くしがたいです。

カリフォルニアは基本的に乾燥した砂漠地帯ですが、花粉症に悩む人は非常に多いのです。住む予定の方、事前に対策を。

2018年年末。アメリカは面倒くさい!という雑感

もう今年も終わる。平均3、4か月に一回しか更新できていないので、昨年の今頃書いたエントリーがやたら最近のことのように思える。

今年は2016年にサラリーマンになってから感じていたアメリカでの生活に関する不満を一旦断ち切ることに成功したため、なんとか精神的には明るめに生きてこれた。

ただ、今年はめんどくさい事象が色々起きた年として記憶される気がする。前回のエントリーで書いたようなことが今年後半に集中して起きたが、まだ面倒くさいことは続いているから。アメリカで家を買って住む計画がある方、今日のエントリーは結構勉強になりますぜ。

 ***

アメリカのローン会社はローン債権の売買を繰り返すので、僕が持っている二つのローン会社がこの1年で2回変わった。日本で言えば、三井住友でローンを組んだはずなのに、いきなり三菱東京がそのローン債権を買い取り、かと思ったらいつの間にか新生銀行がそのローン債権を買っていた、みたいな話だ。

その最新のローン会社が、11月になって家の保険料の免責額が高すぎるみたいなことを言ってきた。ごく簡単にこの辺の仕組から説明しておきたい。

家に問題が起きても保険が適用されることで借主は金銭的負担を免れる。ローン会社も安心だ。だからローンを組むときに家の保険に入るのはマスト。このとき、仮に5000ドルまでの被害なら保険会社は保険を適用しない契約を結ぶと、5000ドルまでの損害は借主が自腹を切ることになる(代わりに保険料が少し安くなる)。これが免責額だ。免責額が高いとローン会社は不安になる。よって今のローン会社が、「免責額を(ローン残高に対して)適正値(があるらしい)に落とせ。保険会社にその旨伝えよ」、と言ってきたのだ。

今なら若干仕組みはわかっているが、最初その指示が書かれた手紙を読んだ時、全く意味が分からなかった。そもそも最初のローン会社も2つ目のローン会社も何も言ってきていない。とにかく保険会社(の代理店)にその手紙の内容を伝えた結果、免責額は適正値内にあることがわかった。なんなんだよ。

これで一件落着かと思ったら、今度は保険会社から「保険料が払われていない」との手紙を受け取った。いや、絶対払ってる。何故なら、一般的にアメリカでローンを組むと、返済額、保険料、固定資産税を毎月ローン会社に支払うようになっているからだ(ローン会社を通じて税金とかは支払われる仕組み)。そこで今度は保険代理店の方に問い合わせ、やっぱりきっちり払っていることを確認した。なんだったんだよ。

などと言いつつ、まだ話は終わっていなかった。

僕はローンを二個持っている。一つはアメリカに来る前に買った家(A)を抵当に入れて借りたお金。もう一個は今住んでいる家(B)のローン。約2年前に書いたエントリーで説明したが、Aを担保に入れて借りたお金は、今住んでいる家Bを購入する時の頭金を捻出するために借りたわけだ。

さて、「保険料が払われていない」という保険会社からの手紙は家Aの保険の話だった。そしてその手紙は11月下旬に家Aに届いた。そして、Aに住んでいる店子から連絡を受けて僕がそれを確認したのが10日前。で、「おいおい」と思いながら保険代理店に連絡したとき、一緒に手紙の確認が遅れた理由も説明すると、「そうだとすると、保険証の書き換えが必要だ。保険は家主が住んでいる条件で書かれている。店子が住んでいるならその主旨に書き換える必要がある」と代理店は言ってきた。

「そうですか、ではそのようにして下さい」 

もう「めんどくさいの極致」にいた僕はそれしか言わなかったが、次に来たメールには「どうせなら保険会社を変更してみるのはどう?保険料は安くなるしA評価の会社だよ」だと。代理店として保険の変更を進めるのは当然何かのメリットがあるんだろうけど、、、、

もうめんどくさいんだよ!
仕事が無茶苦茶忙しい中で心の均衡をなんとか保ってるんだよ!
訳の分からない仕組みだか都合だか営業意欲とかで家にいる貴重な時間を使わせんじゃねぇよ!
そもそも「A評価」のはずの保険会社、ネットでの評判最悪じゃねぇか!!

と、毎日家に帰ると語気強めで毒づいているこのところの僕であります。

しかもですね、僕、この齢にしてこないだ強烈なアレルギー性鼻炎のデビューを果たしたんですよ。。。

12月に入ってこれまで経験のない症状を経験。くしゃみ10連発は当たり前。ツツーと流れ出る鼻水、のどの痛みやイガイガ感。頭痛、倦怠感。。。症状からこの年でアレルギー性鼻炎のデビューをしたのは確実。今年感じた体調の悪さのうち、明らかに風邪だったとは言えないものについてはアレルギー性鼻炎の症状が軽めに出ていたんだろうと思う。これからこいつと付き合っていくのか。。。面倒だ。

そう、面倒なんだよ。アメリカ。
訳わかんないんだよ、アメリカ。
それでも住み続けるのか、アメリカ。
まあ、まだ住んどいてやるよ、アメリカ。。。

では皆さん、よいお年を。

アメリカ故に倍加する面倒くささ

皆さん、お元気ですか?

僕は、前回のエントリーで書いたように4月にフロリダに行ったり、7月にはYellow Stone - Grand Teton国立公園に行ってきたり、普段の土日も大体500kmくらいのドライブ(サンディエゴ方面が多いかな)を楽しんでいたりと、かつてのように心が揺れることもそんなになく日常を送れている。

そういえば前回触れなかったのだけど、フロリダは自分史上初めて訪問した州なのであって、2007年に(陸続きの)アメリカ48州のうち33州まで制覇してから苦節11年、ようやく34州目を開拓できた。来年は是非メイン州などの東海岸北部に行きたいと願っている。

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フロリダ西岸のクリアウォーターという町のビーチ
 

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お馴染みアメリカ最南端の記念碑?

それとイエローストーン。ここはワイオミングとかアイダホとか既に行ったことのある州にまたがる公園なのだが、やたらに行くのが不便な国立公園なため、初めてアメリカドライブ旅行を行った2002年以降ずっと保留にしていた場所だった。そのイエローストーン。勿論興味深い公園だったけど、それよりGrand Tetonの方が個人的には思い出深かった。何しろ風景が素晴らしかった。


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”天然温泉”(何故か間欠泉の写真がなかった。あんなに撮ったのに…)

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Grand Teton。この景色にはやられた。。。

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こんな感じで中二病的自分探しにともなう苦悩を一旦終えて以降、僕の精神状態はまあ安定しているものの、この3か月、つい先日まで、全然別件で僕は参っていた。やたら面倒で鬱陶しいことが繰り返し起こって、マジにかんしゃくを起こしたくなるほどだった。それらの面倒くささは日本にいても起こりうることだけれど、恐らくその大半は「アメリカであるが故に倍加するもの」だ。

 

そもそもこの3か月の間に3回も風邪をひいた。胃に来たり腹に来たりしたうえ、これはいつものことだが寒気が凄い(僕は平熱が低いのでいつも寒がっているし、風邪の時の寒気は半端ない)。しかも8月下旬のある日、血尿が出た。慌てて検査をしたが異常なしで、どうやら薬、サプリ、食べ物がたまたま尿を赤くしたと判明し、事なきを得た。

 

この話における「アメリカ倍加ファクター」はオフィスの寒さだ。いつも設定が22℃くらいになっていて部屋単位での調整が許されない。ただでさえ普段から寒くて仕方がないのに、風邪をひくと地獄になる。なので、僕はオフィスで長袖4枚を着ている。南カリフォルニアで。信じられます?

 

勿論問題はそれだけではなかった。そんな体調の中、9月上旬にネットにトラブルが発生した。いきなり接続が切れ、長時間切れたままになるのだが、それが3日に一回の頻度で起こった。完全に直ったのは10月上旬だったから、4週間以上ネットが不安定なままだったが、勿論その間僕が手をこまねいていたわけではない。AT&Tには3回連絡しているし、直るまで検査があり、ルーター交換をし、最後には工事も行われた。

 

この件での「アメリカ倍加ファクター」はトラブルシュートのために相談するのに大変な時間や手間ががかかることだ。日本のようにメールは受け付けないし、電話番号は探しにくいし、つながりにくいし、ようやくかかっても自動音声が最初に対応してくる。しかも、もはやAT&Tは「要件ごとに何番を押せ」といった自動案内じゃなく、トラブルシュート自体をAIにさせようとしてきた。

 

「ドノヨウナ症状デスカ?」

「ネットの接続が切れた」

「カタカタカタ(キーボードを叩く音)」

「イツカラ始マリマシタカ?」

「1時間くらい前」

「カタカタカタ」

「ルーターノ接続ハ…」


「おいAI!お前が直すのかよ!」 途中でそう気づいた僕は「I need a human!」と叫んだ。すると、ほどなく人間が出てきた。皆さんもいつまでもAIに付き合う気がないときは「人間出せや!」と叫ぶことだ。

 

勿論問題はこれだけではなかった。今月上旬の日曜日。外出しようとして車に乗ろうとしたとき、ガレージの壁と床の境目から水が漏れだしているのを発見。どういう類の水漏れだか特定できず、何しろ「工事の人」をすぐに予約(受付は365日24時間対応する会社)。翌月曜朝工事の人が来て、壁に20㎝四方ほどの穴をあけ水漏れの状況を確認するも、「原因がわからんので、どこから漏れているのかの調査を誰かにしてもらって」と言って彼は帰っていった。


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壁を切り取られた時点でなお原因不明だった水漏れの様子


「いや、誰に頼めばいいんだよ。お宅の会社に調査部隊はいないのか?だれか推薦するとかないのか?」と思いながら、この案件は我家が属するコミュニティの管理会社に相談すべきと考えなおし、連絡を入れ、水曜朝に調査を実施してもらった結果、お隣さんのウオーターヒーターの水漏れが原因と判明。お隣さんに直ちに漏れを止めてもらい、かつ壁の原状回復工事を土曜にしてもらった。

 

この問題での「アメリカ倍加ファクター」は工事の人、ではない(いや、彼を挙げてもいいけど)。ウォーターヒーターそれ自体だ。日本のような瞬間湯沸かし器が普及していないアメリカでは、タンクにお湯を溜め、保温しておくウォーターヒーターが主流。そしてこのタンク、経年劣化等で容易に水漏れを起こす。そしてそれに気付くのが遅れると、また漏れた場所が2階とかだと、階下の損害が尋常でなくなることがある。僕の会社の同僚にも被害者がいるし、実を言えば僕自身、家のウォーターヒーターの水漏れを去年経験している(すぐに発見して交換したけど)。

 

勿論、問題はこれだけではなかった。6日前のことだ。4年くらい前にアメリカで入れた差し歯が取れた。この差し歯は5月くらいだったか、なんか固いものを噛んだら「バキッ」と音がして、そこから少しずつグラグラいいだしていたのだが、とうとう取れた。歯科医は、差し歯の接着用に残してある自分の歯が欠けていて緩んだのだと説明した。ははん。「バキ」はそれだったか。でもそのとき食べてたのはコウナゴ。固いもんじゃなかったんだけどなあ。

 

あ、勿論問題はこれだけではなかった。4日前のことだ。4年くらい前にアメリカで治した歯が取れた。差し歯だった。いや、これは前述のものとは違う差し歯なの。それがいきなり取れたの。2日で二本差し歯が取れたの。先週金曜にはめ直しに行ったけれど、「時間の問題でまた取れるよ」と歯科医に宣告された。そうなると、入れ歯かインプラントの二択しかないとも言われた。

 

この問題での「アメリカ倍加ファクター」は「工事の人も医師も、とにかくみんなアメリカ的マインドセットだ」ということだ。そもそも何でわずか4年前に入れた「高級差し歯」がコウナゴ食ってるときにバキっとなったのか。しかも何で中一日で2本の差し歯が外れたのか。そしてその差し歯を入れた歯科医が批評家みたいな言い方をしながら「次は入れ歯かインプラントか二択ですね」みたいなことをしれっと言えるのか。

 

まあ、もうそれはいいワ。とにかくこうしたことが起きて平日に対応すれば会社に遅れることになり、土日に対応すればせっかくの休みがフイになる。そして何より生活リズムが狂う。そういう面倒がたまらんのです。でもまあ下らない悩みっちゃ下らないわな、とも思ってますけどね。

フロリダとイエローストーンの旅行で感じたことや経験したことは、また別項を立てて書きたいと思います。では。

OC(オレンジカウンティー)賛歌

やたらお久しぶり。今日は忙しいとかそういう話は一切抜きにして、表題通り僕が住むオレンジカウンティー(OC)を賛美しようと思う。

 

さてさて。大谷がアナハイムに来る。アナハイムまで車で30分の所に住む僕には素晴らしい話だ。ドジャースには前田とダルビッシュがいるけれど(ダルは今後どこに行くか不明だが)、LAのダウンタウンにあるドジャースタジアムまでは車で1時間半はかかり、往復3時間の他に球場を出るときの渋滞なんかも考えるとなかなか行く気が起きなかったが、アナハイムは近いし、何より球場の雰囲気が非常にいい。

 

4年前、遠路はるばる東京から遊びに来てくれた大学時代からの旧友とその夫人とともにアナハイムに野球を観に行った時、その美しさ、そして人の優しさには本当に驚いたものだった。


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2013年夏。アナハイムのスタジアム。


何しろ駐車代を払うブースに車を止めて財布を出そうとしたら、そのブースの逆側に車を止めたお姐さんがブースの窓越しに僕らにウインクしつつ、僕らの分まで代金を払ってくれた。試合観戦前からすでに「いい感じ」で、実際球場に入るとその美しさに感動し、また応援も活気がありながら上品で温かく、ベースボールを楽しんでいる感じが非常に素晴らしかった。

 

でもそれは、ここに5年も住んでみればもう不思議にも意外にも感じない。だって僕が住むAliso Viejoがあり、またこのアナハイムがあるオレンジ郡(OC)はそういうエリアだから。同じ南カリフォルニアでもLA郡とはかなり違う。気候はほぼ同じだけど、街並みはOCの方が整備されている。緑の多さが違う。そして人がどこかおっとりしていてやさしい。


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近所の公園内にあるバーバラ湖。今年の春。湧き水による自然湖。

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近所の道路。今年の春。


 

ところで、大谷に関する報道で「アナハイムを選んだ大谷は、日本人コミュニティーがもたらす日本食やその他有形無形の恩恵を受けられるだろう」的な話が出たのを聞いたり読んだりした人もいると思うが、それはその通りだと思う。

 

で、OCで日本人が最も多いのは恐らくコスタメサという町だ。ここには日系スーパーと日本食屋が集中している。僕も妻も2週に一回は日系スーパーに買い物に行く。即席ラーメン、うどん、和牛、納豆、長ネギ、かっぱえびせん、柿の種、和菓子、サッポロビール、魚肉ソーセージ、牛丼の具要するに「日本のもの」を買いに行くのだ。値段は輸入物は高額。現地製造は安い。ただ、長ネギなど日本人しかほぼ需要がないものは、薄利多売ができないために現地生産でも高い。

 

なお、日本食はコスタメサばかりにおいしい店があるとは限らない。僕(や多くの人たち)は、おいしいカツ丼を食べたいならスタントンというOC内陸の町にある和食レストランまで行くし、おいしい寿司ならばアーバインという町のとあるレストランが頭抜けている。ただラーメンに関しては、コスタメサに限らずアメリカに進出したラーメン屋のラーメンは、日本のそれと比べて値段に見合ったおいしさは出せていないと僕は思っている。

それでもあえて推すとすれば、第一に喜多方ラーメン坂内となる。東京で慣れ親しんできた味をかなり再現できているし、実際坂内が恐らくOCで一番行列が途絶えないラーメン屋となっている(文字通り「いつも」行列ができている)。あとは山頭火。日系スーパー「ミツワ」のフードコートに入っていて、僕自身アメリカに来て初めて食べたラーメンが山頭火だったけど、費用対効果は他のラーメン屋よりはいいと思う。ま、でも食べ物は好みだからあまり参考にはしないでください。

 

 ***

 

ということで、このブログで一貫して言ってきていることだが、本当にOC以上のところはアメリカにはないと僕は思っている(僕は、ですので念のため)。12月中旬の今日も20度を超える気温。青空、青い海、緑多き街並み、そして治安の良さ。まさに全米屈指の住環境がここにはある(と僕は思っている。僕は、ね)。そしてリトル東京を擁するLAや、その南にあるトーランス(恐らく最も日系人が住むエリア)ほどではないが、日系スーパーなどの日本人になくてはならない存在もOCは備えている。僕なんかはそのOCの「丁度いい日本人密度」がむしろ好きだ。だから是非、アメリカに住みたい人はOCを候補に置いてもらいたいと思う。


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冬のラグナビーチ。ここには車で10分かからず来れる。

 

但し。但しだ。このような環境を享受するにはどうしてもある程度金が要るのだ。人気エリアに住むには金がかかる。たとえば僕が店子に今貸している60平米の1ベッド1バス(日本の1LDKのようなもの)の家の賃料が17万円。これはこのエリアでは破格の部類に入る(ので次回は値上げする予定だ)が、1LDK17万の家賃なんて常識的に言って高すぎるだろう。


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これが今貸している1LDKのリビング。201611月、貸す直前に撮影。


にもかかわらず、子供のいる夫婦なんかは2ベッドに住み、その場合家賃は最低でも22万から25万は払っている。なんでそんな額を払えるのか、払える人がそんなにいるのか正直わからない。勿論そんな金額は払えない人もいて、そういう人たちはアパートをシェアするなどで凌ぐことはできる。が、いずれにせよOCの好環境を享受したい場合はとにかく家の確保で大変になる(それでもシリコンバレーほどではない。あそこでは年収600万ではどんな家を借りても足が出て、生きていけないという。正直狂っている)。

 

ちなみに、3年前、僕が輸入代行業を廃業しようとしていた時はかなり大変だった。何故なら当時の我が家の様々な控除後の手取りは270万円、月平均で23万弱ほどだ。この状況でコミュニティーへの管理費が月4万円、ネット13千円、携帯2台で12千円、車の保険は毎月にならすと2万円、電気代とガス代で3千円(低い!)、ガソリン代が2台分で15千円。これだけで103千円が出て行っている。残り13万円弱。ここから当時がんを患っていた猫の治療費が毎月7万円で残り6万円。さらにここから二人分の食費が出ていくので、何か不意に支出が出ればもう赤字だ。

 

この状況で生きていけたのは、僕らが渡米時に日本での貯金をはたいて家を買っていたため家賃がかからなかったからだ。もしあのとき僕らが家を賃貸せざるを得ない状況だったら、OCはおろかアメリカでの生活自体が成り立たなかっただろう。


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というわけで、OCで生きていくのには、高い家賃を意識した計画がどうしても必要。これは致し方ないことだ。でもね、僕の暮らすAliso Viejoは、面積19.4平方km、人口5万人ほどなのに、公園が20以上もあって、しかもその公園は「なんちゃってレベル」の規模ではなくて、全てが広く、全てが芝生で覆われ、手入れも常に行き届いている。


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うちのすぐそばにある公園の一つ。うちから500メートル以内に公園が5つほどある。


というか、Aliso Viejoに限らず、とにかくOCは、特に海側の地域は、一度暮らせば二度と出たくないほどに住みやすくて、だから全米から、そして世界中から住みたいという人が殺到してるわけだ。それだけの価値がOCにはあると僕は思うし、あなたがそれに魅了されたとして何の不思議もない。まあとにかくお越しやす。

トランプとマスコミとアメリカと

過激な歯の治療で歯痛はおろか体調を壊し、今日は自宅で静養することとなった。少しずつ書き溜めていたブログ用の文章がこの静養時間を使って仕上げられたので、かねてから宣言していた通りアメリカに住む僕のトランプ(敬称略)とマスコミに関する考察を今日は示したいと思う。言っておくが、長いよ。


◆トランプにまつわる報道の趨勢

「トランプはやばい」、というのは、彼の政策、言動が報道されるたびに多くの日本人も思うことだと思う。「アメリカを再び偉大に!アメリカをアメリカ人の手に取り戻す!」、というスローガンのもと、グリーンカード所有者でさえ、それが特定イスラム7か国から来た人ならば入国をも禁止するという大統領令を出したり(あとで一部撤回)、選挙中はメキシコに費用を出させて国境に高い壁を作るとか放言したり、大統領選中ロシアから協力を仰いだとか、北朝鮮に金正恩と同じレベルの言葉で応戦したとか、まあマスコミから聞こえてくる言葉は彼の「悪行」ばかり。アメリカのマスコミの趨勢は実際そんな感じだし、日本での報道ぶりもまあ同じような感じだろうと思う。

 

◆マスコミの「偏向」

ところで、僕が言う「マスコミ」というのは、CNNOne America NewsFox NewsNBC NewsABC Newsなどのテレビを指し、新聞は殆ど読んでいない。但し、新聞も含めてメディアがどのような論調であるかについては、インターネットで集約的に確認することが出来る。そして重要なことに気付く。それは、マスコミは「報道しない自由」を持っていて、自社の意向・論調が正しいと視聴者に思わせるべく、それに都合のいい事実は何度も時間をかけて報道するが、都合の悪い事実は殆ど報道せず、そして時に、事実の捏造さえ行うということだ。どこかの国に似ているようだが、今はアメリカの報道の話を続けることとする

 

ご存知の方もいると思うが、リベラルメディア、特にCNNとトランプは今鋭く対立している。トランプは、CNNの報道は「偏って」いて「捏造」まで含んでいて、虚報マスコミの代表格と位置づけている。現に彼はCNNの報道を「嘘報道(Fake News)」という率直な言葉で表現し、非難している。トランプが好きか嫌いかはとにかくとして、捏造はしてはならないことは誰にだってわかる。では「あのCNN」が、本当に捏造を行ったのか。

 

答えはYesCNNは、トランプが大統領選挙中にロシアから支援を受けていたという「疑惑」がある中、「米上院の諜報特別委員会は、トランプ大統領がロシアの投資ファンドと何らかの関係があり、かつロシアへの制裁解除に向けて大統領に近い人が動いているのではないかと調査をしている」といった内容の報道を行い、彼に追い打ちをかけようとした。しかしトランプはこれを「Fake News」と断じ、結果CNNは実際にこの報道を取り下げ、これに関わった3人の社員を解雇し、謝罪に追い込まれてしまった。

 

そもそも、大統領がトランプに代わってからアメリカの雇用が大幅に増え、明らかにアメリカの景気は良くなってきていることなど、CNNはもとよりNBCCBSなど大マスコミは殆ど報じていない。そんなことを報じてしまったら自社の意向・論調に都合が悪いからだ。CNNは民主党を支持しており、トランプを追い落としたいわけだが、その目的のために「偏り」を飛び越えて「捏造」という明らかに誤った手段を使ってしまったのだった。ただ、CNNが謝罪したことを知っている人はそうはいないはずだ。だってこれもやっぱり殆ど「報道されていない」のだから。

 

◆アメリカマスコミは政治思想を隠さない

アメリカではマスコミは自分の支持政党を隠すことはない。CNNや他のキー局はリベラル(民主党)であるし、FOXは保守(共和党)側だということは誰でも知っている。但し、これらが牽制しあうことも多いので、「嘘をつきっぱなし、捏造しっぱなし」はなかなか出来ない構図になっている。その意味で、どこかの国よりはマシだと思うが、やはり今はその国の話ではなくアメリカの話を続ける。

 

僕自身、政治的な考え方をマスコミが表明することは悪いとは思わない。むしろ是非自社の立ち位置は明確にしてほしいとさえ思う。件のCNNABC NewsNBC Newsなどのメジャーなテレビ局の報道チャンネルはほぼ全てリベラルであり、例外はFOX Newsくらいである。新聞はある程度左右均等な感じがあり、例えばNY Postは保守系だがNY Timesはリベラルであるといったように、都市ごとに左右の新聞社が一定のバランスで存在している感じがする。

 

このようにメディアが自社独自の政治的なスタンスを持っているということについてはアメリカでは公知なので、支持する陣営には好意的に、支持しない陣営には厳しく報道を行うというのもある程度当然視されている(ただ、それが公正で適切だと広く認識されているという意味ではない)。但し、前述の通りリベラルと保守は互いに牽制してメディア同士で批判しあうので、ある程度健全性もある。だから一たび一方が捏造でもしようものなら、他方のメディアがこれを報道し、追及する。

 

しかし、自社の論調や意向に沿わない事実を故意に報道せず、自社に都合の良いところを切り貼りして編集し、挙句捏造するという行為は政治的な立ち位置を超えて人間としてあってはならないと思う。そのメディアしか見ない人には、報道されないことは存在しないも同然になるし、繰り返しデフォルメされて報道された内容は、あたかもそれのみが真実のように印象付けられてしまうのだから。もう一回言うが、こんなことは左右関係なく許してはならないことだと思う。

 

◆ネットユーザーの反撃

但し、このネット時代に、そのようなやり口に気づいている人たちは非常に多く、現在守勢に回されたトランプ支持者などは特にこのマスコミのやり口に怒り心頭の状態である。トランプもマスコミとの対峙を厭わないタイプなのでCNNなどの左派系メディアの「捏造報道」を攻撃しているが、ネットユーザー(恐らく大半は保守よりの人々だろうけれど)も負けじとYoutubeTwitterなどのSNS上で「左派メディアのFake News」を盛んに非難している。

 

いずれにせよ、「トランプは危険だ、当選させてはならない、当選したのなら早々に降ろすべきだ」というような意図が先にあって、これに沿うようにリベラル系のマスコミは報道内容を構築する(オバマの時は保守系のメディアがそうしていたかもしれない)。捏造は論外として、そもそも自分の論調や意図に合わせて都合のいい事実のみを使い、都合の悪い事実は報道しないという手法で伝えられた情報は情報に値するのだろうか。何故「是々非々」や「両論併記」といった公正なルールがアメリカでも日本でも当たり前になっていないのだろうか。

 

◆僕の政治スタンス

僕は自分の政治的な意識を考えると、どうやら保守側に分類されるのだろうと自覚しているが、僕自身はリベラルの側面だって山ほど持っていると思っている。オバマケアには賛成している(どころか健保を国営的にしなかったのは生ぬるいとさえ思っている)し、銃規制だって当然だと思っている。なので、「保守かリベラルか」という政治的な分類自体には殆ど興味がない。僕にとって、全ての「主義」の最高峰に位置すべきは「ダブルスタンダードの禁止」という考え方の遵守だと思っている。ダブルスタンダードほど人品を欠いた行為はないと思うからだ。

 

人にはあれこれ言うくせに自分はそのルールの適用外にいる。こういうのが許されていいはずがない。そういう輩が法や倫理を説こうとするのを見ると、僕は本当に吐き気を催してしまう。要するに、「お前が言うな」ってことだ。そしてマスコミは、僕もかつてFM局に勤めていたからある程度実態を知る者として言うが、総じて「お前が言うな」と言われるような存在でしかない。「報道しない自由」を駆使し、ダブスタで「敵」を攻撃する。ダブスタでタレントの不倫を断罪する。おいおい、マスコミの中で不倫なんかやってる奴、僕は山ほど知ってるっつーの。高潔な人間ならダブスタだけは恥ずかしくてやれない。人様に意見を開陳するならそのくらいの矜持を持てよ、と僕は心底思う。
 

他方ネットも「玉石混交」と言われている。それはその通りだろうけれど、繰り返すがそんなもん大手マスコミだって同じだ。いや、もっと醜いとさえ思う。視聴率が欲しい。部数を伸ばしたい。よし、センセーショナルに行くぜ。おっと、政権寄りに発言すると左系の抗議は半端ないから基本は政権批判で面倒は最小化しとけよ、とかね。その程度でしかないのによくも偉そうな物言いが出来るものだ。そしてそのことを世界的に気付かせているのはネットなのだから、大マスコミがネットを批判するのを聞くと片腹痛くなる思いだ。

 

◆知人たちのトランプ評

前にもここで少し書いたと思うが、トランプに関するアメリカ人の思いは全く人それぞれだ。12年前にアメリカ旅行をしているときに偶然出会って以来交流があるミネソタの白人夫婦カーラとトムは共和党支持でオバマが大嫌いだ。オバマケアは彼らの苦しい生活を破綻させるかのような重い負担だという。彼らには国民皆保険制度なんて要らないし、政府にそんなものの世話を頼む気はないから放っておいてくれ、と怒っている。しかし、彼らはインドネシア人をホームステイに招くほど心優しい人たちであって、白人至上主義者なんかじゃない。

 

6年前に会社からリストラされて今自営業をしているサンディエゴの白人中年男性デイヴィッドは、不法滞在のメキシコ人やフィリピン人が許せないと言っていた。彼らは英語を話す気もなく、アメリカ文化に馴染もうとせず、ただ雇用を奪うだけ、だからだそうだ。当然トランプ支持だ。だが彼も白人至上主義者ではない。何故なら黄色人種の僕に対し、旅先で友好的な雰囲気で話しかけてきたのは彼の方だからだ。

 

逆に、僕が引っ越す前に住んでいたコミュニティーで仲良くなった白人男性ダグは、トランプをヒトラーと同一視するほどの危機感を持っていたし、最も親しくしていた白人男性キャメロンとその妻の白人女性ジェアンディは、トランプの支持者は「頭が悪いやつばかり」と明け透けに言っていた(但しヒラリーも嫌いだった)。

 

同じ白人でこれだけ違いがあるのだが、いずれも「普通のアメリカ市民」だ。そして僕は、彼らの政治的な思いに良否や甲乙をつけるつもりは全くない。アメリカは彼らの国であるし、彼らの民主主義の下で行われた選挙の結果、今回たまたまトランプ政権が出来たのであって、よそ者の僕がとやかく言う気は全くなかった。ただ、トランプにせよヒラリーにせよ、彼らを選ぶための情報はマスコミがもたらすものだから、僕は彼らの意見を聞くたびに「情報操作に踊らされた結果の意見でなければいいね」と心の中で思ったものだ。

 

◆僕個人の感想など

トランプがアメリカを分断しているという論調があるが、これは違う気がする。というか、ダブスタがここでも出ていると思う。トランプは不法滞在の外国人やイスラム過激派への強硬な対応を言い、「アメリカを自分の元に戻す」というスローガンを掲げて白人中流階級未満を中心に支持を得た。これがリベラルからの怒りを買った。それは間違いないのだが、オバマもこれまで自由意思で決めていた保険加入を国民に強制し、リベラルにさえ弱腰と言われた外交で「小さな政府(政府が持つ権限は軍事などにとどめ、他の税金の使途は国民が決める、みたいに政府の国民生活への関与を最小化する考え)」を旨とする保守派の大いなる怒りを買った。トランプがやっていることをアメリカの分断と呼ぶなら、オバマのこともそう言わないと公平な意見ではないだろう。

「北朝鮮と一戦交える可能性があるではないか。好戦的で危険すぎる」、という人もいるかもしれないが、トランプが大統領でなくても「やらざるを得ないときはアメリカはやる」のであって、外交・軍事に関する指導力や戦略のまずさから左右両方から非難を浴びたオバマでさえ、アフガン、イラク、シリアには軍事行動を行っているし、アルカイダのウサマ・ビンラディンを殺害したのはオバマ時代の米軍特殊部隊だ。もしオバマの軍事攻撃は責めずにトランプの北への強硬姿勢のみをあげつらうなら、それこそダブスタそのものだ。こういうのが積み重なってマスコミ不信が起きているのであり、アメリカが分断されているのだとしたら、その張本人は一義的にマスコミだと僕は言いたい。

 

なお、僕の住む南カリフォルニアにおいては、僕の感覚値では分断は起きていない。もう人種のるつぼと化しているこの地では、互いに分断しがたい依存関係が出来ているとさえ言える。白人は基本裕福で、むしろ肉体労働をしてくれるヒスパニックの人などがいないと困るし、黄色人種も基本裕福で、かつ子供たちは皆頭が良く犯罪も起こさない。ただ、残念ながら黒人のことはよくわからない。南カリフォルニアに住む黒人が少ない上に、住んでいる場所も限定されていて、あまりお見掛けしないからだ。

 

ビザ取得はトランプになってから明らかに厳しくなっている。移民弁護士とやり取りすることの多い人事の僕が言うのだから嘘偽りのない事実だ。弁護士は、「E(投資家)やL(駐在)は昔なら簡単に受かっていたのだ、最近急速に落ちる人が増えている。これは間違いなくトランプ政権になってからの傾向だ」と言っている。なので、そのような報道を目にしても「マスコミの偏向」ではないことを公平を期すためにお伝えしておく。しかし、日本人のグリーンカードホルダーまで国外退去させられる、といった心配は無用だし、そんな事実も兆候もない。もしトランプがそんなことをやったら、アメリカは全体としてそこまで愚かではないから、彼の政治生命は即座に終わり、司法は大統領令を再び却下し、我々の地位も短期のうちに回復するだろうという確信がある。僕はそのようなことが生じるとは思っていないし、仮に生じても特に不安はない。

◆最後に

ここまでの流れから、僕をトランプ擁護派寄りと思った人も多いのではないだろうか。しかしさっきから繰り返し言っているが、そうではないのだ。僕はマスコミの恣意的な偏向と捏造は人倫にもとる、と考えているのであって、保守的な考え方をするからといってトランプ擁護派と言われても困るし、逆にリベラルな考え方の部分をもってオバマ・クリントン支持派と言われても困るのだ。

 

そして最新のトランプ評を言うならば、やはり彼は「馬鹿なのかもしれない」と思っている。先日バージニアで白人至上主義者とアンチがぶつかる事件があり、今もアメリカでは大きな話題になっている。で、まさに昨夜寝る前に見ていたCNNでは、「トランプがあり得ない発言をした」と糾弾していた。白人至上主義者とカウンタ―側の対峙による暴力の発生で死者・負傷者が多数出たこの状況で、トランプは「喧嘩両成敗」とか「両陣営にいい人々が存在する」というような発言をしたが、これは断じて許されないというものだった。

 

正直に言って、この時点では僕はトランプの発言をそんなにおかしいとは思わなかった。白人至上主義者といえど、結社の自由や言論の自由を行使するのは憲法で守られた権利であり、そこにカウンター側が実力で止めに入ったために暴力がエスカレートしたのだから、いかに白人至上主義者の言葉が過激でも、カウンター側の行いが言論封殺にあたるという解釈は当然にできる。だから、憲法遵守の立場に立てば、むしろカウンター側の実力行使のほうが問題だと考えることも出来るはずなのだ。

 

だから僕は「CNNお得意の切り貼りとレッテル貼りが始まったのか」、と思ったのだが、次いで見過ごせないVTRが流れた。白人至上主義者は、ナチのようないで立ちで、松明を掲げ、「ユダヤ人は要らない」とか「白人の生活こそ重要だ」と唱えながら闇夜を行進していた。特に前者の発言は、憲法が認める言論の自由を逸脱していると言われても仕方がない。ナチのような服装で、ドスの効いた声で、少なくとも法的根拠の基づいていると考えられる「不法移民は出ていけ」ではなく特定の人種・宗教信奉者であるユダヤ人への差別的な言葉を叫んでいるその光景に、是々非々で言ってCNNの言い分の方が正しいと僕には素直に思えた。

 

だから、この状況にもかかわらず喧嘩両成敗だとか両陣営にもいい人はいるなどという言葉を発したトランプは、馬鹿以外の何物でもないと思えた。ごく少数の白人至上主義者(というか人種差別主義者)の支持はキープできても、マジョリティーの保守派でさえ眉をひそめるこの発言は、支持率の低下に拍車をかけるだけだろうし、勿論これはCNNの虚報でもない。これで一体、彼はどうやって自分の政策の正当性を担保し、そしてそれを実行する基盤を維持することができようか。次いで、リベラル思想の持ち主で著明な映画監督のマイケルムーアがゲストで出演し、「トランプはレイシストであり、今なお彼を支持するという者は同様にレイシストだ」と繰り返し言っていたが、彼を嫌う保守層にも相当な説得力があるだろうと感じた。

結論。トランプは強硬な保守思想の政治家以前に幼稚で馬鹿だ、というのが僕の意見。でも、だからこそ時間の問題で淘汰される存在だと思っている。なので、前からそうだったが、ここまで馬鹿であればなおのこと、アメリカ居住の日本人として彼への恐れは僕は全く感じていない。北朝鮮との軍事衝突に関しては、起きる可能性は否定しようがない。でもそれはトランプが交代すれば起きないというのは間違いだと思う。北のような非人道的な国は許してはならないというのはアメリカ人の大半の考え(≒正義感の発露)なので、保守もリベラルもやるときはやるのだから。

ではまた。

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