トランプ支持の源泉

前回からやたら時間がかかってしまい申し訳ない。忙しいのはいつものことだが、今回はパソコンの不調などもあって遅れてしまった。

トランプ大統領が、主としてアメリカの中流またはそれ以下に属する「白人保守層」から支持されて勝ったことは誰でも知っていると思う。しかし、その真の理由/原因についてはなかなか知ることはできないと思う。実際、父と兄が大統領だったジェブ・ブッシュやマルコ・ルビオなどを抑え込み、保守党内のレースで下馬評を覆せたのは何故か。これは僕にも疑問だった。

でも、前回述べたように、アパラチア以東の人々の一般的な特性、すなわちキリスト教原理主義的な考え方とその影響力を知って、その理由が見えた。すなわち、中流以下の白人保守層の一般的な思想、理想、希望、欠乏感、不満を最もくみ取れたのがトランプだった、ということだ。

この白人保守層の人々の多くがプロテスタントであり、大なり小なり大きな政府反対、銃器規制反対、中絶反対、同性結婚反対といった考え方に立つ。最右派になると進化論もビッグバンも認めないほどなだ。だから、昨今のアメリカは彼らには総体としてその反対に進んでいて「リベラルすぎる」ように見えており、大いに苛立っていた。

「自分たちの経済的苦境は我々の仕事を奪う移民のせいではないか?このような状況で何故オバマは健康保険の加入義務化などをするのだ?我々の税金を何故自分たちの意向に反して使われなければならない?誰に使っている?外国人?不法移民?異教徒?ふざけるな!」

こうした不満が募る中で、今までの保守政治家にさえ飽き足りなくなった中流以下の白人たち(多くの場合プロテスタントたち)とって、トランプは最も「良い候補者」だった。

当選して以降の言動からも、トランプが白人保守層の受けを意識していることは確かだと思う。たとえば中東から移民に関する無神経な、というかかなり野蛮と言っていい彼の政策を皆さんは覚えているだろう。テロ支援国の人間はグリーンカードの保有者お含めて一切アメリカに入国させないという、あれだ(後から撤回してはいるが)。

アメリカ(の白人たち)の利益を守る政治家であると思ってもらうには、仕事を奪う外国人の入国を規制する政策は当然打ち出したいところだ。しかもその外国人がイスラムならば、これ以上の大義名分はない。何故って、異教の外国人の入国を阻止しようとするトランプをプロテスタントが支持しないはずがないのだから。この際、政策が失敗または未遂に終わったかどうかは重要ではない。トライしないで信用を失う方がトランプには怖いのだから。

トランプは、その意味でしたたかだった。そもそも支持基盤はプロテスタントなんだから、そこにターゲティングした姿勢を見せるのはまあ当然のことだった。

僕が今「馬鹿だなぁ」と思うのはマスコミ、特にリベラルマスコミだ。多くのTVや新聞社は基本民主党寄りなので、トランプ出現以前から共和党側を叩いていたが、トランプが出てきて大慌てしダブスタ報道に拍車がかかった。

たとえば「不法滞在の移民を国外追放する」のは合法である。当然の措置とさえいえる。これを人道的観点から阻止したいなら正攻法でそう言えばいいのに、リベラルは対象者が「不法移民」であることを糊塗し「移民全体」に印象操作するのだ。公平に見て、トランプはそんなことは一切言っていない。

このSNSの時代、このような言論の矛盾や不公正はすぐにほじくり出される。結果、保守派の心に火をつけ、大統領選でのトランプの勝利や現在までの地位の安泰へと導いてしまった。

保守でもリベラルでもいいけど、ダブスタはもうやめないと。もう情報はマスコミだけのものじゃない。僕らは情報を与えられるだけの立場ではなく、情報を見抜き、自ら生み出すこともできる。近親相姦で妊娠しても中絶を許さない保守派や、北朝鮮を含む共産主義国家に手を貸すような左翼まで、アメリカには本当に多くの人たちがいる。僕はどちらに加担するのもいやだから正確で公正な情報が必要だ。「真実」や「公正さ」は「主義」の上にあるべきものだと僕は信じる。

ああ、最後はマスコミ批判というかダブスタ批判で終わっちゃった。以上、アメリカ東南部を巡る僕の理解内容の更新にかかるレポートでした。