ずっと忙しかった。89月は何とか土日は休めたのでセコイヤ国立公園に行ったり(これはまた別の日に書く)サッカーを観に行ったりもできたが、平日は仕事に追われその後はあれほど忌避したかった一日16時間仕事が3週間も続き、今週になってやっと「普通の日」がやってきた。これもあと数日の運命だが、この時間を活かして久しぶりにブログを書こうと思う。

 

 ***

 

アメリカで就職することについて以前ここに書いた。まあその時に書いた内容は基本変更はないのだが、アメリカでにせよ日本でにせよ「いい就職」をすることの難しさは変わらない中、今日は「就職弱者は絶対まともな就職は出来ないのか」という問いについて「1%の例外がある」ことを書きたい。

 

「就職弱者」というのは、要するに「履歴書が弱い人」のことだ。大卒でない、いい大学を出ていない、経験企業が一流とか有名とかではない、特筆すべき実績がない、経験業務に市場ニーズがない、転職回数が多い、年齢が高い…。こういうのが一つ又は複数当てはまると「いい就職」は簡単ではない。なお、ここで言う「いい就職」とは高い賃金が期待でき生活が安定するものという意味で、「自分にあった遣り甲斐のあるもの」とかの一種抽象的な意味ではないということで話を進める。

 

さて、以上のような要素が当てはまる人が好条件の会社に行くのはかなり難しいというのは当然として、可能性が皆無なのかと言うとそうではない。何故そう言えるかと言えば、上記の「1%の例外」に僕が当てはまるからだ。

 

以前どこかで書いたかと思うが僕は大学中退者である。しかも28歳から35歳までは音楽で食っていた人間だ。音楽家廃業直後の19991月、356か月にして普通の会社員を目指し履歴書を10社に送ってみたが、勿論ものの見事に全部撃沈した。特に僕は人事をやりたかったのだが、人事の経験などそれまで一切ないのだからそれも含めて非常に順当な結果だった。

 

だが同年4月、日本の会社では英語力が重視されることが多いことに着目し、通訳の勉強を学校で開始した。通訳で食っていくもよし、通訳をやった実績で企業にアピールするもよし、という考えだ。この戦略は完全に当たった。これが弱者の戦略その一、「誰でも簡単に手に入れられるようなものでなく、それでいて企業の需要は非常に高いスキルを身に付け、就職にもフリーランスにも備える」だ。

 

同年7月、実際に通訳になったことで企業の関心が引けるようになり、正社員採用に受かることが多くなったが、更に2年間ほどあえて派遣の立場で有名企業や官公庁傘下の独法などに入って人事や法務をやり(英語が絡むので未経験でもやらせてもらえたわけだ)、そこで(正社員より低い給与であることを不満に思わず)高度な仕事を任せてもらい実績を上げることで経験値の向上と履歴書の強化を行った。

 

これも前もって練った戦略その二、「とにかく一流の企業とか高待遇の職場に、一旦どういう身分でもいいから潜り込め」に沿ったものだ。なお、あえて派遣にしたのにはまだ理由がある。それは、就職を急ぐあまり妥協してあまり気の進まない企業に正社員として入ってしまうのは危険と思っていたことだ。実際失敗に気づいてまたすぐ転職しようとしても、採用者の心証を考えればそれはまず成功しない。

 

結果、2001年から派遣として入り、その後契約社員として働いていた某ラジオ局の当時の総務部長だったM女史が僕の社員化を後押ししてくれ、僕は37歳で新卒採用率1000人に一人ほどの会社に入社した。給与は契約社員時の倍になった。翌年には管理職になった。

 

このラジオ局で、僕はほぼ放送局初となる成果主義人事制度の導入プロジェクトのリーダーを社員になる前に拝命していた。そして懸命に働いた。そしてその実績が社員への扉を開き、その後も人事(と法務)として濃密な経験を重ねることができ、その後2011年まで、僕は東証一部上場企業を含む都合4社で人事法務などの管理職として働いた。

 

 ***

 

以上が「履歴書が汚い就職弱者」が1%の例外を生み出す方法であり(勿論他にもあるかもしれないが)、「35歳の音楽家崩れ」がそれなりの「いい就職・いい転職」に成功した実例である。

 

要するに、一般的に見て「どうにもならない汚い経歴」だからとあきらめず、それを徐々に綺麗にしていく戦略を練り、すぐに結果を求めずむしろ滅私奉公的に働いて実力を蓄え、またその実力を間近で見てもらい、そしてしっかりと認めてもらうのだ。あなたがそこで確かな戦力になっているなら、誰かが引き上げてくれる可能性は必ずあると僕は思う。

 

それでも、これだけ力説しても、就職弱者が「いい就職」をするのは無理だと思う人は多いと思う。が、もしも、今51歳の僕が、再度上記と同じことを今アメリカの地で再現していると言ったら、あなたはどう思うだろうか。

 

今は詳しいことは書けないが、とにかく就職弱者にだってより上を目指す方法があることを頭に入れて頂ければ幸いだ。なお、最後に強調しておくが、今回の「いい就職」は「賃金の高さや安定」を基準にしている。それが「幸せな就職」となるかどうかとは一旦無関係なのでご了解願いたい。