アメリカという甘美な幻想

南カリフォルニアはオレンジ郡に住むオヤジです。妻共々サラリーマンでしたが、2012年10月に移住してきました。個人輸入代行やコンサルタントを生業にした後、2016年からは会社員に。移住する遥か前から積み重ねてきた様々な「アメリカ体験」も含めて文章に残すためにこのブログを書いていますが、会社員復帰以降は忙しすぎて更新は稀に。自由の国、アメリカを含めた全体主義への流れ。これを絶対に食い止めましょう!

2015年02月

残業への考え方の違い

かなり昔、僕はデューダやエンジャパンなどの転職斡旋サイトを利用したことがあるが、その時の登録を解除していないので今でもメールがバンバン来る。そこで紹介される案件のキャッチに「残業30時間以内」というのがある。言うまでもなく、日本では残業30時間以内はかなりの売り文句になるからだ。

 

実働2122日で残業30時間なら1日あたり約1.5時間残業が発生するので、8時間の通常労働と合わせると9.5時間会社にいることになる。確かに日本ではいい方だ。だが、アメリカでは「残業時間が少ない!」などと募集に際して宣伝する概念そのものがない。

 

彼らは何か特別な事由がない限り8時間働いたら家に帰る。翻って日本では、マシな会社でも大体残業が30時間は発生する。ということは、日本という国では最低30時間の残業を生む「特別な事由」が"恒常的"に発生しているということか。


  ***
 

僕もサラリーマン時代は深夜のタクシー帰りを含め長時間労働を経験している。それでも僕は「意味のない残業」だけは回避しようとしていた。家族との時間、趣味の時間、それを犠牲にすることは耐え難かった。だから僕自身、人事の管理職として「成果を上げてスキっと帰宅」を実践しようと心掛けていた。

 

しかし、定時に帰ることそのものが「もってのほか」という雰囲気を気にしないで自由にふるまえるほど、僕は「日本人ばなれ」してはいなかった。そのストレスによって(早期で発見できたからよかったが)胃癌を患ったと確信している僕は、憧れていたアメリカに対し「憧れ以上の想い」を持つに至った。すなわち僕は、アメリカが「無意味な長時間労働を強いる国ではない」ことにも強く惹かれたのだ。

 

アメリカに住んだこともなく、せいぜいアメリカ人のメル友との会話で得た程度のイメージでしかなかったが、Appleの創始者であるスティーブ・ジョブズやMicrosoftのビル・ゲイツのように、成功への野心を燃やす人は他人に言われずとも長時間の労働をする一方、年収数百万のサラリーマンがプライベートを犠牲にして長時間無意味に働くなどということはアメリカではあり得ないという確信があった。

 

果たして、渡米して普通に生活する普通の人々と交流する中でわかったのは、その確信はほぼ100%当たっていたことだ。

 

僕の近所の複数の知り合いで、夜の7時に家にいないということはない。いや多くは6:30PMには帰宅している。つまり午後5時台には会社を出てる。土日に会社に借り出されるということもない。会社はそんな要求はしないし、社員側もそんな要求をされることなど微塵にも考えていない。

 

そんな「働かないアメリカ」で普通の国民はプライベートを充実させ、生きることを楽しみ、そのくせ世界No.1の経済大国を維持している。そして日本は「今日も残業、明日も残業」でやっているのにその後塵を拝している。人口の違いなど要因は様々あるだろうが、概して日本の長時間労働は生産性につながらない非効率的なものだと僕はずっと思っているし、「楽してNo.1」のアメリカに学べることがあるのではないかと僕は思う。

 
  ***
 

昨今アメリカでは、日本のアニメやマンガなどへの関心を経て日本独特の事象も多くの一般の人が知るようになっている。当然日本人の長時間労働も知っているし「過労死」という言葉さえも知っている。僕のコミュニティーの友人も勿論それを知っている。そして、何故そこまで私生活を削って会社に時間を割くのかは到底理解不能だという。家族も趣味も全部犠牲にして働いて、一体なんのための人生なのかわからないという。

 

僕も日本にいた時からずっとそう考えていた人間だった。成果さえ出せば、その時間の使い方に文句を言われる筋合いはないと20代から考える人間だった。周囲と協調するのが苦になる人間ではなかったが、無意味さを強いられることにだけは耐えられなかった。

 

アメリカに来ている日本人は、それなりに同じ日本人の知り合いがいるし、こっちに来てから自然に知りあいになることもある。彼らの中には僕のように日本である程度の額のお金を会社員としてもらいながら、それを捨ててアメリカに来て起業した人も少なくない。

 

それで大成功した人もいるが、多くは日本時代よりお金は稼げていないし、日本にいたころのように長時間働くこともざらにある。僕も繁忙期は休みが4か月とれなかったこともある。しかし、何かが違う。それは「全てに意味を感じる」ということだ。僕もその友人たちも「誰かにやらされていない」のだ。これはアメリカならサラリーマンでも同じ感想を抱くことだ。

 

アメリカはこう言う。

 

  成功したいの?どうぞ。没落したいの?どうぞ。
  どちらもあなたの自由です。何も強いませんよ。

 

僕にはこの考えがあっていた。日本での長時間労働に「特別な事由」は何も見いだせなかった。趣味の悪い根性論に付き合わされるのは勘弁してほしかった。だから年収が3分の1になってもいいと思ってアメリカに来た。本当に年収は3分の1になったが何の後悔もない。代わりに手に入れたもの - ほぼ100%の自己決定の自由、青空、海、緑、砂漠 - があまりに心地いいからだ。僕だけではない。友人たちもほぼ同じ理由でここにとどまっている。

 

起業すれば全てにおいて自己決定するのは当たり前だが、アメリカではサラリーマンとして働いても日本のような居残りへのプレッシャーなどはありえない。日本は言うまでもなく素晴らしい国だ。しかし、生きる上で切っても切れない重要な要素である「働く」という点では、これほど不条理で馬鹿げた意識が横溢している国はないように思える。

あなたが本当に欲しいものが「自己決定の自由」なら、アメリカに来るのは間違いではないと僕は思う。

アメリカの物価に対する雑感(高いもの編)

「アメリカの物価は安いものは極端に安い」という話を前回書いた。おさらいすると、モノやサービスが極端に安くなるのは「大量生産できている商品をそのままシンプルに、何の付加価値もなしに売る場合」だ。

しかし、逆に大量生産品でも一個売りの場合や人の手間がかかっているモノ、そして「アメリカの国柄を反映したサービス」は途端に高くなることが多いのだ。そこで今日は「何でこんなに高いの!」というものの紹介だ。

 
◆車の保険 

まず「アメリカという国の国柄」が理由で極端な高値になっているのだろうと思われるサービスで、しかも生活上必須のものの代表例は車の保険だ。東京では車を持っていなかったから詳細は知らないが、日本の保険のCMを見ていると2万とか3万とかくらいから保険に入れたはずだ。

だが、僕と妻は
1300ドル(156000円)払っている。勿論保証内容を最小限にすれば少しは安くなるのだろうが、それでも二人で500ドルなどという商品はない。恐らく訴訟社会のアメリカで事故ればとてつもない賠償金を請求されかねないため、それを見込んだ保険料設定になっているのだと思う。「アメリカの国柄」と言った理由はこれだ。僕らの保険もフルカバーだ。下の写真みたいな目にあったし。

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2013年10月、左折中に信号無視のおばあさんに追突され、バンパーが死ぬ

 
◆医療費 

そしてもう一つの代表例が医療費だ。アメリカの健康保険制度というのは日本の国民皆保険とは全く違い、「民間の保険会社の保険商品にユーザーが好きに選んで入っていい」というものだ。日本でサラリーマンをやっていれば給与額と保険料は比例するが、アメリカではそんな仕組みはない。会社は私企業である保険会社と法人契約し、従業員は会社のルールにのっとり保険料を負担する。


個人事業主は日本では国民健康保険に入り、その保険額は所得に連動するはずだ。だがアメリカは保険会社を自由に選んでいいし掛け金も懐事情による。だから、貧乏なら貧乏なりの掛け金で、お金持ちはお金持ちなりの掛け金で商品を選べる。結果、一般人と金持ちのカバー内容は全然違うものになる(なお本当の貧困層には政府が保険を用意している)。

 

たとえば「保険会社が負担を始めるのは医療費が300ドルを超えたところから」、という契約になれば(普通の庶民は大体そんな契約になる)、もし医療費が298ドルだった場合自己負担は100%だ。日本なら500円でも5万円でも3割負担なのに。

 

しかも、もしあなたが何らかの事情で無保険だったら、そしてもし「たかが盲腸」でも患ってしまったら、恐らくあなたは真っ青になるだろう。何しろ手術にかかる費用は最低でも20000ドル(240万円)だ。標準的な内容の保険に入っていれば年間の負担総額は5000ドル程度の契約になっているはずだから差し引き15000ドルは保険会社持ちだが、無保険なら全額負担だ。しかもしかも、あなたが無保険とわかったら手術を拒否される可能性だって低くない。アメリカは怖い。

 
◆住居賃貸料

ほかに生活に密着したもので特記すべきは家賃だ。僕の家(コンドミニアム)は60平米で日本風に言えば1LDKだが、これをもし借りるとなると相場では1350ドル(今のドル円レートでは162000円)払う必要がある。駅から10分のところにある僕の赤羽の3LDKのマンション(恥ずかしい呼称だ)を貸してもそんなに高い家賃は取れないのではないだろうか。

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我が家のリビング

南カリフォルニアの(一応)都会にあるとはいえ、まだまだ手つかずの土地も豊富にある環境だ。なのに、曲がりなりにも東京23区内のターミナル駅から10分の場所にある3LDKのマンションの賃貸価格が、そんな場所と比べ同じか安いっていうのは普通ではないと僕は思う。アメリカではサラリーマンや学生さんの中にはルームシェアで何とか負担を抑えたがる人も多いが、それは当然のことだと言える。

 
◆単品売り 

あと身近なところでは、モノの「一個売り・一本売り」には気を付けた方がいいだろう。たとえば冷蔵庫で冷やされたコーラ(550cc入りペットボトル)は一本200円かかる。これはスーパーでもコンビニでも一緒だ。350㏄入りの缶コーラなら数ケース単位での購入なら1本あたり25円で買えるのに200円払ってどうするの、って話だ。ガムも一個単位なら120円だ。3個セットなら200~240円程度なのに。

 
◆安いものの追加情報 

生活密着品やサービスで高いモノの例で思いつくのは以上のような感じだが、結局のところアメリカの物価の話になれば「安い事例」のほうが多い。生鮮食品は普通なんでも圧倒的に安いし。(ただ意外と卵が高い。普通サイズで普通品質の場合、今は1ダースで260円くらいだ。ご注意願いたい)。なので最後にまた安いものの例を数点あげて今日は終わりにしたい。

 

<肉類>

鳥肉は1パウンド(453g)で1.5ドル(180円)で買え、しかも非常に臭味がなく旨い(豚も安くてまあまあ旨い。牛だけが安いがまずい)。

 

<光熱費>

僕と妻でアメリカに来てから、ガスは月平均9ドル、電気は月平均13ドル程度にしかなっていない。東京で暮らしていたころのガスや電気の価格は詳細には覚えていないのだが、毎月光熱費は両方で最低でも月平均1万円は行っていたはずで、2500円で済んでいたという記憶はない。

ただ、単位あたりの価格が安いのは確かなのだが、それ以上に重要なのはここの気候である。何しろエアコンを使わなくていい。夏は暑いけど湿気がないから暑がりでない限りエアコンはいらない。冬は温暖でストーブとかがいるのはせいぜい10日前後だ。この気候が電気ガス代の最小化につながっている。なお、上下水道については、僕の住んでいるコミュニティーが固定の管理費の中に組み込んでいるのでいくらなのかわからない。

 

<ガソリン>

ずっと昨年夏くらいまでは1ガロン(3.78リットル)あたり3.5ドルだったが、今は2.3ドルになっている。リッター換算で0.6ドル、72円だ。なお、カリフォルニアはガソリンは高い方なので、安い州なら更に安い。この記事を書いている現在一番安いのはオクラホマ州で「ガロン平均1.84ドル」だ。これをわかりやすく円とリッターで言うと「リッター58円」となる。

 

こんな感じだ。

猫の喘息とスーパーボール

先週は大変だった。127日火曜日の夜、癌を患っている猫"Pico"が、突然ぜーぜーと口を開け、涎を垂らし出した。呼吸は苦しそうで今にも窒息するのではないかという状態だった。いつもの医者は既に診療を終わっていたがダメもとで電話してみると、提携の救急病院の案内が流れた。この時僕はまだ風邪が治りきっていなかったがそんなことを言っている場合ではなく、急いでPicoをそこに連れて行き、喘息の発作ということで一晩入院治療を受けさせた。

 

翌朝退院は出来たのだが、今後Picoは喘息の症状とも生涯おつきあいする前提で生きていくこととなった。癌に加え喘息。何の罪もない猫にあまりにひどい仕打ちではないか。僕らのPico関連の医療費も既に半年で50万円近くなり(この一晩の入院だけで75千円かかった)生活はますます厳しい。神がいるのなら苦情を入れておきたいと思う。

 

ところでおとといの21日日曜、アメリカは全国的にスーパーボールで盛り上がっていた。視聴率は49.6%だったとのことで、近所のあちこちでTV観戦している人たちの歓声が聞こえた。アメフトに関心がない僕ら夫婦はその時間普通に出かけて、近所の郡立自然公園を散策したりスーパーに買い物に行ったりした。道路はガラガラ、駐車場もガラガラ、店内もガラガラだった。

 

「近所の郡立自然公園ってなんのことだ?」、とお思いになる方もいるかと思うが、ウチから歩いて10分の所に結構な自然を残した公園がある。名前は「Laguna Coast Wilderness Park」といい、コヨーテやボブキャットも生息する公園だ。僕の住むAliso Viejoは海と緑と都市機能を日常的に気軽に堪能できるので、住むならマジにお勧めする。

  

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本当にここがウチから歩いて10分にある公園 
 
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この池の奥(山のふもと)には、写真では見えないが州道133号線が走っている

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公園の北端。住宅地として開発された地域と手つかずの自然が壁一枚隔てて共存する
 
 

僕らが日本にいた時もスーパーボールのニュースは流れていたとは思うけど、このアメリカだけで極端な人気を誇る究極のガラパゴス競技への人々の熱狂ぶりは、日本にいては全然実感が出来なかった。ことに今回のスーパーボールはボストン対シアトルだったので、南カリフォルニアには何の関係もない。だからここまで近所の人々が熱狂するなんていくらなんでも想像できなかった。

 

このスーパーボールの熱狂は思わぬところでもうかがい知れた。自宅でTV観戦する人を当てこんで、スーパーが過去最大級の特売していた。1月に入ってコーラなど清涼飲料水が、12缶入りひと箱あたりの価格でいつもの倍以上(税抜き2ドル程度が4ドル以上)になるなど急騰していたのだが、スーパーボールウィークになったら1.99ドルになっていた。その他のものもこれまで見たこともない安値になっていた。アメリカは極端すぎる。「中庸」を知らんのか。

 

また、昨日の22日月曜はうちのエリアのゴミの収集の日だが、収集車は終日来なかった。そして今日火曜日の朝7時ごろ、いつもより1時間早くけたたましい音で収集車がやってきて、ゴミ置き場いっぱいのゴミを運んで行った。こんなこと初めてだ。恐らくスーパーボール観戦者が日曜に出したゴミが多すぎて、月曜中に収集しきれなかったのだろう。

 

日本の独自の商品や文化を揶揄するように「ガラパゴス」と言うことがあるが、アメリカだって一緒だ。アメリカ人全てがグローバルな視点でものを考え行動するとか、そんなことはありえないし、そもそもガラパゴスだからといってそれがすなわち「悪」であるということにはならない。むしろ絶滅しないように労わりたいとさえ僕は思う。

 

ただ、ペットを含めた医療費の高さだけはマジに勘弁してほしい。アメリカの医療費は「フツー」じゃない。あ、「アメリカの物価-高いもの編」をそろそろ書かなきゃ。

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